賃貸管理コラム
サブリース契約を結んでいる物件を売却する場合、原則として「サブリースの継承」が必要になります。
そのため、通常の不動産売却とは異なる手続きが求められます。サブリース契約の特徴や継承の仕組み、売却時に注意すべきポイントまでをわかりやすく解説します。
不動産の所有者(オーナー)と不動産会社、不動産会社と入居者それぞれの間で契約が締結されます。
オーナーと入居者との間で直接的な契約は結ばれません。
また、サブリース契約はオーナー側から解約できないのが一般的です。
サブリース契約の物件を売却するためには、サブリース契約を新たな所有者が引き継ぐという、サブリースの継承が必要です。サブリース契約の概要や、サブリースの継承の意味について詳しく解説します。
厳密には、オーナーと不動産会社はマスターリース契約(特定賃貸借契約)を、不動産会社と入居者がサブリース契約(転貸借契約)を締結します。
一般的な管理委託契約とサブリース契約の違いとして以下の3つが挙げられます。
管理委託契約 | サブリース契約 | |
契約の仕組み | ・オーナーと不動産会社の間では、原則として管理業務委託契約のみを締結する ・オーナーと入居者の間で賃貸借契約を締結 |
・オーナーと不動産会社の間では、特定賃貸借契約と管理業務委託契約の両方を締結する。 ・建物丸ごと一括して不動産会社に貸し出す ・不動産会社と入居者の間で転貸借契約を締結 |
賃料の流れ | ・入居者からオーナーに直接支払われる、もしくは不動産会社を間に挟んで支払いが行われる |
・不動産会社からオーナーに空室分も含めて賃料(リース料金)を支払われる ・各部屋の賃料は入居者から不動産会社へ支払われる |
委託できる範囲 | ・大部分は不動産会社に委託可能。ただし設備修繕工事や入居中のトラブル対応など、最終的にはオーナーの判断が必要になる部分もある |
・入居中のトラブルなど最終的な判断も含め、ほぼすべて不動産会社に委託可能 |
サブリースにおいてオーナーによる手続きが必要になるのは1〜4です。
オーナーとサブリース会社で契約を締結した後は、入居者との契約やトラブル対応はサブリース会社が担当します。
厳密にはサブリース契約ではなく、オーナーとサブリース会社の間で締結する「マスターリース契約」の引継ぎとなります。
サブリースにおいて、サブリース会社は入居者に対する貸し手であると同時に、オーナーにとっては借り手でもあります。
物件所有者であるオーナーが一方的に契約を解約できる場合、賃借人であるサブリース会社の権利が守られません。
そのため多くの場合、正当な事由がある場合を除き、オーナー側からの解約はできない決まりとなっています。
そして、不動産を売却したいという理由は基本的に正当事由とは認められません。
不動産を売却する場合、サブリース契約はそのままに物件を売却することになります。
このようにサブリース物件のまま不動産を売却し、契約の名義を新たな所有者に変更することを「サブリースの継承」というのです。
サブリース契約は特殊な性質をもち所有者側の自由度が低いため、一般的な不動産賃貸とは異なるリスクがあるため注意が必要です。
この章では、サブリース契約を継承する際の問題点とリスクについて解説します。
サブリースは借地借家法第28条により、オーナーによる一方的な解約は認められません。
貸主側による更新拒絶や解約には正当事由が必要と定められているためです。
正当事由なくサブリースを解約する場合は、解約に伴い違約金が発生する可能性があります。
参考資料:e-Gov 法令検索 | 借地借家法
一方で、サブリース会社は借主であるため解約のハードルは低めです。
契約期間中でもサブリース会社側が経営難などの場合は、一方的に解約される恐れがあります。
そのため、空室率に関係なく一定額の家賃収入を得られます。
物件や契約内容によりますが、満室時の家賃収入の80〜90%が家賃保証率の相場です。
ただし、家賃および家賃保証率は周辺の家賃相場、物件の築年数、入居率などの要因に基づいて、契約書に定められた一定期間ごとに見直しが行われます。
物件の需要低下により家賃保証率が下がる恐れや、家賃自体の減額により賃料収入が減ることもあるでしょう。
そもそも賃料の額を決めるのは、原則として入居者と契約をするサブリース会社側であり、オーナーはほとんど関与できません。
サブリースでは家賃の利回りが変わることが珍しくない上、オーナー側から交渉をしにくいのが実情です。
そのため、サブリース物件は契約を締結していない物件に比べて敬遠されやすく、なかなか買い手が見つからないケースも多いようです。
サブリース契約を継承すると、オーナーが優位性を得にくい上に物件を手放しにくくなります。
すなわち自身が所有する不動産でありながらも、自由度が非常に低くなってしまうのです。
しかし、サブリースには家賃保証をはじめとしたメリットが多数存在します。
必ずしも「サブリース物件は避けるべき」「サブリース継承は危険」とは限りません。
大切なのは、サブリース継承のリスクを知ることと、サブリース継承のポイントを押さえることです。
以下では、サブリース継承で失敗しないための重要なポイントを2つご紹介します。
物件を借りる場合に適用される借地借家法により、オーナー側からの解約が難しいことは事実です。
とはいえ、途中解約が不可能というわけではなく、一定の要件を満たせば解約できるケースもあります。
たとえば、売却しないとローンの返済ができない場合など、正当事由として認められることがあります。
オーナーによる解約ができない場合は、契約書にその旨が明記されているはずです。
サブリース継承で特にトラブルが起こりやすいのが、途中解約の可否に関する部分です。
そのため、正式にサブリース契約を締結する前に、途中解約については必ず確認しましょう。
オーナーにとってあまりにも不利な内容である場合は、契約前に交渉するか別の会社に変更するのも1つの手段です。
すなわち、将来的に不動産を売却する時は、買い手候補者にサブリース継承について理解を得る必要があります。
サブリース継承はさまざまな問題点やリスクがある以上、サブリース物件はなかなか買い手が見つからない可能性が高いです。
そのため、サブリース物件を購入する場合は、売却時のことまで考える必要があります。
売買契約を締結する前に、将来売却した際にリスクとなる要素や課題になり得る部分を洗い出すことが大切です。
その上で、高値で売却できる可能性が期待できる場合のみ、サブリース物件を購入すると良いでしょう。
将来的に売却が難しそうなときは、当該物件のサブリース継承は避けた方が無難です。
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