賃貸管理コラム
賃貸管理会社の手数料を節約することは大事ですが、手数料の安さだけで管理会社を変えるのはおすすめしません。
管理会社を変えたほうがいいケースもあります。
管理会社に支払う手数料の相場や、管理会社を見直すべきケースについて解説します。
最初に賃貸管理会社に手数料を払う理由や、手数料の相場を解説します。手数料が安かったり無料の会社がある理由なども解説したうえで、割高だと判断できるケースなども紹介します。
管理手数料とは、所有物件の管理を管理会社にまかせるために支払う手数料のことです。
賃貸物件の管理には、
など何かとやることが多く、自分で管理するのはかなり大変です。
オーナーにとっては、手数料を払って管理会社にまかせることで手間・時間・精神的な負担を減らせるメリットがあります。なお、管理手数料は「家賃収入×〇%」で計算されるのが一般的です。
家賃や入居率が高いほど、管理手数料の総額も上がることになります。なお、「家賃収入×〇%」の「家賃」には、毎月の賃料のほかに管理費・共益費なども含まれます。
国土交通省が示している「賃貸住宅標準管理受託契約書」という契約書のひな形があります。
こちらの管理報酬の記載欄にも「家賃及び共益費(管理費)の〇%(別途、消費税)」という記載があり、多くの会社がこの方式を採用しています。
「今支払っている管理手数料は、相場に比べて安いのか?それとも高いのか?」
日本賃貸住宅管理協会が発表した2022年度のデータをもとに見てみましょう。
首都圏・関西圏・首都圏と関西圏を除くエリアのすべてにおいて、「家賃収入×5%」の人が最多です。全国平均で「5%」が7割弱、「3%」が2割弱となりました。
関西圏では「5%」が5割、次いで「3%」が4割弱となっており、関西圏では相場が二分化されている様子がわかります。
全国的に前年と比べ「4%」が大幅減、「5%」が大幅増となっており、日本賃貸住宅管理協会は「2021年以降の建築資材や人件費の急激な上昇によるインフレ要因が考えられる。」と考察しています。
参考:日本賃貸住宅管理協会|第27回 賃貸住宅市場景況感調査
管理手数料がオーナーの収入にどのくらい影響を与えるか見ていきましょう。
戸数が10戸・家賃が10万円で、毎月の収入が100万円であると仮定した時の家賃収入は以下の通りです。
手数料率 | 無料 | 3% | 5% | 7% |
月々の手数料 | 0 | 3万円 | 5万円 | 7万円 |
(毎月) 家賃収入-手数料 | 100万円 | 97万円 | 95万円 | 93万円 |
(年間) 家賃収入-手数料 | 1,200万円 | 1,164万円 | 1,140万円 | 1,116万円 |
1年間の家賃収入差額 | - | 36万円 | 60万円 | 84万円 |
このケースでは、手元に残る収入に年間で最大84万円の差が出ました。
管理手数料のコストを抑えるためにはどうすればいいでしょうか。
特に都市部に多いのですが、手数料を相場以下の1〜3%以内に抑えたり、中には無料で管理を提供したりする会社も存在します。
管理手数料のコストを抑えられるのは魅力的ですが、なぜそんなに安くできるのでしょうか。
それには以下の理由が考えられます。
なぜなら管理手数料に含まれる業務は管理会社との契約によって異なるので、手数料のみに着目しても本当のコストがわからないからです。
手数料が3%で業務の範囲が狭い場合と手数料5%で業務範囲が広い場合は、5%のほうがお得かもしれません。
管理会社に委託できる業務は、以下のようなものです。
また、管理手数料とは別に、都度費用がかかる業務があります。
たとえば、以下の業務は別途費用になることが多いです。
これらにかかる費用も会社によって金額がバラバラです。そのため、管理手数料プラス別途費用のトータルでかかる費用で比較するのがおすすめです。
手数料が相場より格安の場合は、管理サービスの質もより厳しくチェックしてください。
また、管理業務の何にいくら払っているのかを分析してみると、払うべき適正な管理手数料が見えてきます。
月刊不動産2020年9月号掲載「費用対効果から考える、賃貸管理料の根拠」によると、管理手数料3%のケースと5%のケースでは費用の使途内訳がずいぶん異なります。
手数料3%の場合は、費用が入居者募集・入居者対応・家賃の集送金といった一部の業務にかたよらざるを得ません。
いっぽう手数料率を上げた場合、論文の筆者である今井氏は「人的資源をかけることができるため募集対策を家主と十分に行うことができ、自ずと入居率が高まることになる。
入居率が高まれば、最も手のかかる募集業務から手が離れるため、入居者対応や、オーナーとのコミュニケーション(コンサルティング)に時間を注ぐことができる体制が取りやすくなる」(※)
と指摘しています。
適正な手数料を払うことで入居率が高まり、募集業務から手が離れてより入居者満足の高い管理対応が可能になるため、高い入居率が保たれる好循環につながるでしょう。
(※)出典:今井 基次(株式会社ideaman 代表取締役)
月刊不動産2020年9月号掲載「費用対効果から考える、賃貸管理料の根拠」
公益社団法人全日本不動産協会|費用対効果から考える、賃貸管理料の根拠 – 公益社団法人 全日本不動産協会
サブリース契約とは、サブリース会社がオーナーの賃貸物件を一括で借り上げ、会社が貸主となって入居者に転貸する仕組みの契約のことです。
まずメリットを紹介します。
空室が出た場合の家賃保証・滞納者がいる場合の滞納保証がつけられています。
一般的な賃貸経営なら、空室・滞納が出ればその分の家賃収入は減りますが、サブリースは安定した家賃収入を確保できます。
入居者との賃貸借契約の当事者はサブリース会社で、オーナーは契約の当事者にあたりません。
そのため、管理はサブリース会社が一手に引き受けてくれます。
「管理をまかせるだけなら一般的な管理業務委託と同じでは?」と思うかもしれません。
しかし、管理業務委託の場合は契約しているのはオーナーと入居者ですから、最終的に物事を判断して決定するのはオーナー自身になります。
いっぽう、サブリース契約ならサブリース会社が判断・決定まですべて行ってくれます。
賃貸経営が初めての場合や、遠方に住んでいて状況確認が難しい場合は安心できる仕組みでしょう。
いっぽうでデメリットもあります。
手数料の相場は10〜20%。
賃貸管理のすべてをまかせる分、手数料が高額になります。
免責期間といって、サブリース会社がオーナーに空室時の家賃を支払わなくてもよい期間があります。
退去後の1〜2カ月間を免責期間としている会社が多いです。
その期間は家賃収入がないことには注意してください。
メリット・デメリットを比較して、自分にとってメリットが大きい場合は選択肢に加えてください。
今の管理会社に対して「以前はよくやってくれていたのに、最近は手数料に見合った仕事がされていない」と感じている場合、まずは管理会社と話し合いをして状況を改善するよう申し入れましょう。
それでも対応がなされない場合は、信頼関係を保つのが難しいため管理会社を見直すべき時です。
管理手数料の高さそのものに不満がある場合は、より慎重に検討を進めます。
先にお伝えしたとおり手数料に含まれる業務は管理会社によって異なるため、手数料のみに着目しても本当のコストがわからないからです。
まずは現在の契約内容のうち、以下の3点を把握しましょう。
この3つを明確にしてから、すべて同じ条件で他社から見積もりをとりましょう。
そうすることで、同じ内容の管理業務を依頼する場合の相場がつかめます。
比較した結果、今の会社がベターな場合もあります。
今の会社が割高だと判断できた場合は、変更を具体的に進めていく作業に入ります。
管理会社に委託せず自主管理を選んだ場合のメリット・デメリットもお伝えします。
管理会社の変更は、そこまで珍しいことではありません。
オーナーが管理会社に感じる不満として「報酬に見合ったサービスが提供されていない」と感じる人が26.4%、「管理業務の内容が不明確である」と感じる人が23.2%にのぼるというデータがあります。
参考:株式会社三菱総合研究所|賃貸住宅管理業者登録制度に係るアンケート調査結果
業務内容やコストに納得できない場合や、管理業務についてお互いの認識が異なりストレスがたまる場合、より良質な管理を求めて管理会社を変更するのは自然なことだといえます。
管理会社を変更するメリットは、以下の4つです。
順番に詳しく見ていきましょう。
新しい管理会社を選ぶにあたっては、複数社から見積もりを取ります。
それにより価格競争が生じたため、コストダウンにつながりやすくなっています。
会社からプランの提案を受ける時に、今まで抱えていた不満を伝えていると思います。
不満に思っていたこと・新しい会社に希望していることを共有できているため、不満の解消につながりやすくなります。
新しい管理会社は、オーナーが管理会社のことをよく見ているとわかっています。
よって、緊張感を持って業務にあたってくれると考えられます。
オーナーの期待に応えるために優先的に客付けをしてくれることを期待できます。
空室率を下げるために本当に必要だと思えば、たとえ言いにくくても適切な家賃の提案をしてくれる・入居者のニーズに合わせたリノベーションの提案をしてくれるといった可能性もあります。
順に見ていきましょう。
そのため、引継ぎ業務を積極的に行ってくれることまでは期待できません。
ここだけは新しい管理会社にまかせっきりにせずに、自らが前の会社に引き継ぎ状況の進捗を確認するようにしてください。
管理会社を変更することで、家賃の振込口座も変わるでしょう。
入居者に周知されていないと、前の管理会社に振り込まれてしまうトラブルにつながります。
事前にエントランスにお知らせを掲示する、入居者1人ひとりに「管理会社変更のお知らせ」「家賃の支払いについて口座変更のお願い」を送付するなど、ていねいな説明を行いましょう。
家賃保証会社を利用中の場合、管理会社が変更されると保証契約が終了してしまうことがあります。
このまま何もせずにいると保証会社も連帯保証人もない状態になり、滞納リスクに対処できなくなります。
新たな保証会社を利用するか連帯保証人を立てる必要があるので、新しい管理会社と相談しましょう。
賃貸管理会社の手数料に不満がある場合、自主管理する選択肢もあります。
ここでは、自主管理のメリットとデメリットを解説します。
自主管理のメリットは次の3つです。
1.管理手数料がいらない
自分でやる分、手数料をカットできます。
2.仲介会社やリフォーム会社と人脈ができる
入居者募集のお願いに不動産仲介会社を回ったり、リフォーム会社と打ち合わせをしたりするため、人脈が広がるでしょう。
3.賃貸経営のノウハウが身につく
自分でやってみることで経験値が増え、ノウハウが身につきます。
後から管理会社に委託することになっても、その経験は管理会社とのやりとりで役立つでしょう。
次にデメリットを4つ紹介します。
1.時間・労力の負担が大きい
賃貸管理では、数多くの業務が発生します。内見や契約時・退去時は入居者とのスケジュールをすりあわせなければなりません。
入居中に設備の故障が発生したら、迅速な対応が求められます。休日・早朝・夜間でも対応しなくてはなりません。よって、本業との両立は簡単なことではありません。
2.常に知識のアップデートが必要
契約時や退去時は法的な知識が必要になります。勉強不足だと、知らずに法律違反をしてしまう可能性があります。
また、不動産関連の法令は頻繁に改正が行われるため、勉強して終わりではなく常に最新の知識を仕入れる必要があります。
3.資産価値が下がる可能性がある
自主管理はオーナーが1人で管理しているため、人によっては契約書類や帳簿などの保管状況がよくないことがあります。
また、建物・設備の点検やメンテナンスのタイミングを自分で決められる分、費用がかかるものはつい後回しにしてしまいがち。
その結果、建物の状態が悪くなっている場合があります。
こうした理由で、物件を売却する時に敬遠される傾向が見受けられます。
4.トラブルに発展した場合の精神的苦痛
入居者同士のトラブルが起きた場合、オーナーが間に入って事を収める必要があります。また、設備の不具合が起きた時の対応に時間がかかると本格的なクレームにつながりかねません。
滞納者への督促も神経がすり減る仕事です。自主管理だと相談相手もいないので、悩みを1人でかかえこんでしまう心配があります。
国土交通省のデータによると、オーナーが管理業務を管理会社に委託する理由は、
・「契約更新・終了時のトラブルをなくしたいから」(52.2%)
・「建物に関するトラブル発生時に、適時適切に対応してほしいから」(44.3%)
・「入居者とのトラブル発生時に、第3者として間に入って調整してほしいから」(40.8%)
となっています(複数回答)。
なるべく対人トラブルを避けたい気持ちは皆同じだといえます。
参考:国土交通省|賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(家主)
ここまで自主管理のメリット・デメリットを紹介しました。
国土交通省のデータでも、すべて自主管理している人は18.5%と、全体の約2割にとどまっています。
しかし、以下の条件を満たす人は自主管理でもいけるかもしれません。
自主管理を選んだ場合、大変さの次にネックになるのが入居者募集(客付け)活動ですが、実は、入居者募集から契約までだけを不動産会社に委託することも可能です。
先ほどの国土交通省のデータでは、「入居者募集から契約までを業者に委託し、それ以外の管理は自ら行っている」人が25.5%存在しています。
ただし依頼を受けた会社側から見ると、自主管理物件の客付けの優先順位は決して高くありません。
自社の管理物件の客付けが最優先され、自社管理物件で決まらない場合にお客様を紹介してもらえるという順番になることは知っておいてください。
参考:国土交通省|賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(家主)
他社と比較し、自主管理も検討した上で今の管理会社を変更すべきとの判断にいたった場合の、管理会社を変更する時の選び方・比較方法について解説します。
家賃収入を増やすためには、入居率が高くないといけません。
空室を埋める能力は管理会社を決定するにあたって1番重要な基準です。会社のホームページやパンフレットに記載があるので、必ずチェックしてください。
その地域に詳しい会社なのか、早急な対応が期待できそうかも確認します。
対応速度については、メールや電話の返信が早ければ入居者への対応も早いであろうと推測できます。
高い入居率実績があり、地域の事情にも詳しく、問い合わせへの返信も早いことがわかったら、次は企業としての信頼性を確認しましょう。
確認するポイントは以下の3つです。
まずは、宅地建物取引業者の免許番号を見てください。
東京都知事(〇)第〇〇〇〇〇号
国土交通大臣(〇)第〇〇〇〇〇号
のように、カッコ内に数字が記載されています。
カッコ内の数字が宅地建物取引業免許の更新回数を表しています。
免許の更新は5年に1回のため、カッコ内の数字が大きいほど業歴が長いといえ、長く地域に根付いた経営をしている会社だと判断できます(※)。
(※)県外に事務所を出す・複数の県の事務所を1カ所の県に集中させる・個人事業主から法人化したなど、免許を切り替えた場合は(1)に戻ります。1つの参考として見てください。
2つ目の行政処分履歴について。
宅建業者が行政から「業務停止処分」や「免許取消処分」を受けた場合、その旨が公開されます。契約を結ぶ前に必ず確認しましょう。
処分履歴は、こちらから検索できます。
不動産の売買・管理 宅地建物取引業者 – 国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト
(注意:おおむね1カ月に1度の更新です。また直近5年分の情報です)
3つ目の不動産業界団体への加盟の有無について。
宅地建物取引業保証協会や全日本不動産協会などの団体に加盟しているかどうかも確認しましょう。
加盟していれば、万が一トラブルが発生した時は相談することができます。
管理戸数が少しずつ右肩上がりに伸びているのが理想です。
ある時点で急激に戸数が増えている場合は、逆に要注意。無理な営業をしていたり、人手が足りずに不適切な管理状態になっていたりするおそれがあります。
その会社が管理している物件を実際に見に行き、できれば既存オーナーからの評判を聞いてみるのも有効な手段です。
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