賃貸管理コラム

マンションの自主管理はなぜ「やばい」のか?トラブル例や手間のかかるポイントを解説

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賃貸物件の管理方法は、管理組合が主体となって管理する「自主管理」と、第三者の管理会社に業務を委託する「委託管理」の2つに分けられます。

経費節減の観点から、自主管理に魅力を感じるオーナーもいるかもしれません。しかし、自主管理は住民同士のトラブルにつながりやすく、煩雑な管理業務を自ら行う手間もかかります。

賃貸物件の自主管理が「やばい」といわれる理由や、想定されるトラブルの例、自主管理で手間がかかるポイントについて紹介します。

自主管理が「やばい」といわれる理由

賃貸物件の自主管理とは、さまざまな管理業務を、オーナー個人か管理組合が自前で行う方法です。

特に、管理組合が存在するマンションでは、管理業務を外部委託せず、自主管理を選ぶ場合があります。近年は管理委託費の高騰に悩むマンションも多く、その解決策の一つとして、住民(区分所有者)から自主管理が提案されるケースもみられます。

しかし、自主管理を選ぶマンションの割合は、実際にはあまり多くありません。国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、管理業務の全てを管理組合が実施しているマンションの割合は、わずか5.2%です。

その背景には、自主管理のマンションは「やばい」という根強いイメージがあります。

マンションの管理不全が深刻化しているから

自主管理が「やばい」といわれる理由の一つは、マンションの管理不全が深刻化しているからです。

例えば、滋賀県野洲市のマンションの例では、築50年経っていない物件にもかかわらず、建物の修繕などが約10年間行われなかったため、壁が崩落するなどの事故が発生しました。

こうした管理不全を招く原因の一つとされるのが、管理組合による自主管理です。マンションは築年数が長くなるにつれて、空き部屋や賃貸される部屋が増加し、区分所有者が減少します。

同時に居住者の高齢化も進行するため、自主管理のマンションでは、管理業務の担い手である管理組合の構成員が将来不足するというリスクに対処する必要があります。

入居希望者にとって、マンションの管理状況は重要な判断材料の一つです。国土交通省の調査によると、マンション購入の際に考慮した項目として、12.0%の人が「共用部分の維持管理状況」を挙げています。

マンションの管理不全を予防し、入居希望者の安心感を高めるという観点からも、管理会社への業務委託を検討するとよいでしょう。

※参考:国民生活センター「知っておきたい、マンションの管理」
※参考:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」

管理組合による横領事件が発生しているから

また自主管理のマンションでは、管理組合による横領事件も発生しています。

マンションを自主管理する場合は、管理組合の役員(理事長や会計担当理事など)が、通帳や銀行届出印を保管したり、キャッシュカードを作成したりすることが可能です。

そのため、管理組合の役員が通帳やキャッシュカードを悪用し、大規模修繕に備えて積み立てている財産を使い込む事件も起きています。こうした横領事件がニュースとして報道されていることも、自主管理のマンションは「やばい」というイメージにつながっています。

自主管理のマンションで起こり得るトラブル例

マンションの管理運営は、トラブルが多いといっても過言ではありません。国土交通省の調査によると、令和5年度、トラブルの発生状況について「特にトラブルなし」と回答したマンションは、全体のわずか16.0%にとどまります。

特に、自主管理のマンションでは、管理組合の経験やノウハウ不足から、次のようなトラブルが発生する可能性があります。

  • 居住者の迷惑行為
  • 建物の不具合
  • 管理費や修繕積立金の滞納

以下で詳しく解説します。

※参考:国土交通省.「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」

居住者の迷惑行為

国土交通省の調査によると、マンションにおけるトラブルで最も多いのが、「居住者間のマナーをめぐるトラブル」です。令和5年度、何らかの理由で居住者間のトラブルが発生しているマンションの割合は、全体の60.5%にのぼります。

専門的なノウハウを持たない管理組合に、マンションの管理業務を委ねる場合、以下のような行為やマナーをきっかけとしたトラブルが多発する恐れがあります。

  • 違法駐車
  • 違法駐輪
  • ペット飼育
  • 生活音
  • バルコニーの使用方法
  • 共用部分などへの私物の放置

建物の不具合

マンションにおけるトラブルで、「居住者間のマナーをめぐるトラブル」の次に多いのが、建物の不具合に関するトラブルです。

マンションが管理不全の状態に陥ると、以下のようなトラブルが発生する恐れがあります。

  • 雨漏り
  • 水漏れ
  • 外壁落下

マンションの建物は経年とともに劣化していきます。管理組合による自主管理を選ぶ場合も、長期修繕計画を策定し、定期的に大規模修繕を実施することが大切です。

大規模修繕に関するノウハウがない場合は、建築士やマンション管理士などの外部専門家に相談するとよいでしょう。国土交通省の調査によると、外部専門家を活用しているマンションの割合は41.4%で、そのうち47.4%が大規模修繕に関する相談を目的としています。

管理費や修繕積立金の滞納

管理費や修繕積立金の滞納も、自主管理のマンションで起きやすいトラブルの一つです。管理費などを滞納する居住者が増加すると、マンションの維持管理に必要な費用を捻出できず、住環境の悪化につながる恐れがあります。

管理費などの滞納が3カ月以上発生しているマンションの割合は、全体として増加傾向にあり、令和5年度は全体の29.2%と、平成30年度から4.8%増加しました。

居住者による滞納を防ぐため、自主管理のマンションでも収納業務の一部は管理会社に委託するなど、管理費や修繕積立金をより確実に回収するための対策を講じるとよいでしょう。

自主管理を選んだ場合に手間がかかるポイント

マンションの管理業務の中でも、特に手間がかかるのが「基幹事務」と呼ばれる業務です。

基幹事務とは、マンション管理適正化法(マンションの管理の適正化の推進に関する法律)第2条第1項第6号において定められた、次の業務のことです(※)。

  • 管理組合の会計の収入および支出の調定
  • 出納
  • マンション(専有部分は除く)の維持または修繕に関する企画または実施の調整

「管理組合の会計の収入および支出の調定」とは、管理組合における会計業務全般を指します。例えば、収支計算書をまとめたり、予算案を作成したりする業務です。

出納(すいとう)とは、管理費や修繕積立金を居住者から回収し、修繕工事などを担当する業者に支払う業務です。管理組合に委ねる場合、役員による横領や、居住者の滞納といったトラブルが起きやすい業務でもあります。

また、マンションの修繕や維持管理に関する業務も、基幹事務の一つです。長期修繕計画に基づく大規模修繕だけでなく、小規模な補修工事やリフォームも含まれるため、基幹事務の中でも特に手間のかかる業務です。

こうした基幹事務は、マンション管理適正化法に基づき、マンション管理業を営む事業者(管理会社)に委託することが認められています。オーナー自身で基幹事務を行うのが大変という人や、管理組合による自主管理に不安がある人は、専門家である管理会社への委託を検討するとよいでしょう。

※参考:国土交通省 関東地方整備局.「マンション管理業について」


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