賃貸管理コラム

アパート経営で自主管理するリスクとは?よくあるトラブルや対策も

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アパートの自主管理はメリットがある一方でリスクもあります。物件が遠方にある場合や管理戸数が多い場合、副業でアパートを経営している場合などは、管理委託がおすすめです。

アパートを自主管理するメリット・デメリット、自主管理で起こりやすいトラブルを解説します。

アパートを自主管理で経営する場合のリスク

アパートの自主管理はメリットがある一方でリスクもあります。

そこでアパートを自主管理するリスクを詳しく解説します。

アパート経営の自主管理とは?管理委託との違いも

アパート経営において、自主管理とはオーナー自身が管理業務を行うことを指します。一方で管理委託は専門の管理会社に業務を委託する方法です。

自主管理のメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
  • 管理費用を削減できる
  • 入居者との直接的なコミュニケーションがとれる
  • 物件の状況を詳細に把握できる
  • 経営の柔軟性がある
  • 時間と労力がかかる
  • 専門知識が必要
  • リフォーム費用の判断が難しい(相場が分からないなど)
  • 資産価値が下がる可能性がある
  •  
  • 入居者のクレームを直接受ける(設備が壊れたら深夜でも即対応)

自主管理のメリット


管理業務を委託する場合の料金は家賃収入の約5%ですが、自主管理する場合、管理会社への委託料は発生しません。

入居者と直接やり取りする機会も多く、困りごとなどにいち早く気づけるため、トラブルやクレームの未然防止につながります。

自主管理のデメリット


一方で自主管理は、家賃管理や建物の維持などオーナー単独でさまざまな業務をこなす必要があり、物件の安定的な管理が難しい点がデメリットです。

適切に維持管理されないマンションは資産価値が下落し、借り手や買い手が見つかりにくくなるリスクもあります。定期的にメンテナンスすれば寿命を延ばせる設備も、劣化が激しくなります。

自主管理が向いている人

自主管理が適している人は、以下のような特徴があります。

  • 時間に余裕がある
  • 物件が近隣にある
  • コミュニケーション能力が高い
  • ストレス耐性がある
  •  
  • 不動産や建築に関する知識がある

逆に、以下のような人には自主管理はおすすめできません。

  • 多忙で時間的な余裕がない
  • 物件が遠方にある
  • 管理戸数が多い
  • 本業に専念したい(副業の場合)
  •  
  • 不動産管理の知識や経験が乏しい

特に物件が遠方にある場合や管理戸数が多い場合は、管理の安定性の確保が難しく、入居者にも迷惑がかかる可能性が高くなります。精神的・身体的な疲労も伴うでしょう。

また、副業としてアパートを経営している場合、自主管理に時間を取られすぎて本業に支障がでる恐れもあります。

このような状況では、管理委託がおすすめです。

自主管理で起こりやすいトラブルと対策

自主管理では以下のようなトラブルに直面する可能性があります。

  • 家賃滞納
  • 騒音への苦情
  • 設備の故障・修繕
  • 退去時のトラブル

これらのトラブル対応に自信がない場合や、苦手な分野がある場合は、その部分だけ管理会社へ委託するのもおすすめです。

トラブルの内容と対策をそれぞれ解説します。

家賃滞納


公益財団法人・日本賃貸住宅管理協会の『賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)』によると、2022年度の全国の1カ月滞納率は0.8%です。

これは約125戸に1戸の割合で家賃滞納が発生していることを示しています。

家賃滞納は不動産投資における重大なリスクの一つであり、早期の対策が重要です。

以下は家賃滞納への対策です。

  • 入居者の審査を厳格に行う
  • 滞納初期段階での迅速な対応
  • 保証会社の利用
  • 法的手続きの検討

騒音への苦情

入居者間のトラブルで多いのが騒音問題です。たとえば深夜のピアノ演奏や子どもの飛び跳ねなどが苦情につながりやすいです。

以下は騒音問題への対策です。

  • 防音対策を施す
  • 入居時に生活ルールを明確に説明する
  • 入居者との話し合い
  • 必要に応じて退去要請

設備の故障・修繕

民法第六百六条ではオーナーは物件の修繕をする義務があるとされています。

突発的な設備の故障や修繕要請は、迅速な対応が重要です。

以下は突発的な設備の故障への対策です。

  • 信頼できる施工会社のネットワークを構築する
  • 定期的な点検を実施し、予防保全に努める
  • 修繕積立金を設定し、大規模修繕に備える

退去時のトラブル

原状回復や敷金返還をめぐるトラブルが発生することもあります。

敷金は退去時に汚れなどを最初の状態に戻す「原状回復費用」を差し引いて返還されますが、原状回復の範囲を明確に定めないことでのトラブルが多く発生したため、法律が改正され「通常の生活でできる消耗」や「経年劣化」は原状回復費用として差し引けなくなりました。

以下は退去時のトラブルへの対策です。

  • 入居時と退去時の室内状況を写真で記録する
  • 原状回復の基準を明確にし、契約書に記載する
  • 公平な査定を心がける

国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』も確認しておきましょう。

自主管理は客付けも弱くなる

国土交通省の『賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査』によると、すべて自主管理のオーナーは全体の約2割程度です。

多くのオーナーが何らかの形で管理会社を利用していることが分かります。

自主管理の場合、入居者募集だけを不動産会社に委託することも可能です。

ただし客付けが弱くなる傾向があります。自社で所有・管理する物件やAD(広告料)が高額な物件から客付けしたい不動産会社にとって、オーナーが自主管理する物件は優先度が低くなるからです。

不動産会社に定期的に連絡して発破をかけることも一応は有効ですが、完全に解決するわけではありません。

管理会社に委託することで、より効果的な集客と安定した経営が可能になる場合が多いです。

管理委託でアパートを経営するメリット・デメリット

管理委託は自主管理と比べて多くのメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。

ここでは、管理委託のメリットとデメリットを詳しく解説します。

管理委託とは?メリットを解説

管理委託とは、アパート経営の管理業務を専門の管理会社に依頼することです。

主なメリットには以下があります。

  • 専門知識を活かした効率的な管理
  • 時間と労力の節約
  • トラブル対応の迅速化
  •    
  • 入居者募集の強化
  • 法令遵守の徹底
  • 資産価値の維持

アパート管理を委託することで、経営を続けていく手間を減らせます。入居者の募集まで委託できる管理会社もあるため、空室リスクを減らせるメリットもあります。

管理委託は賃貸管理と建物管理に分けられる

管理委託のサービスは大きく分けて、賃貸管理と建物管理の二つに分類されます。

それぞれ委託できる業務内容が以下です。

賃貸管理 建物管理
  • 入居者募集
  • 賃貸契約の締結
  • 家賃徴収
  • 入居者対応
  • 定期点検
  • 修繕・メンテナンス
  • 清掃
  • 設備管理

これらの業務を必要に応じて委託できます。

たとえば賃貸管理のみを委託し、建物管理は自主管理するといった選択も可能です。

管理委託のデメリット!どんな人におすすめ?

管理委託は以下のような人におすすめです。

  • 多忙で時間がない人
  • 不動産や建築の知識が乏しい人
  • 物件が遠方にある人
  •    
  • 複数の物件を所有している人
  • 精神的負担を軽減したい人

ただし以下のようなデメリットもあるので注意が必要です。

  • 費用がかかる
  • アパート経営のノウハウが身につかない
  • 管理会社に任せきりだと、雑な対応をされる可能性がある
  • 管理会社や担当によって質が変わる

それぞれ詳しく解説します。

費用がかかる

管理委託の大きなデメリットは、管理費用がかかることです。

一般的に月額家賃の5%程度の管理費が発生します。ただしオーナーが自分で行える部分は自主管理にし、苦手な部分だけを委託するなど柔軟な対応も可能です。

これにより費用負担を抑えつつ、効率的な管理を実現できます。

アパート経営のノウハウが身につかない

管理会社にすべてを任せきりにすると、アパート経営のノウハウが身につきにくくなります。

そのためオーナーも空室対策を行うなど、ある程度経営に関与するのがおすすめです。

たとえば入居者との会話や家賃設定などに参加することで、経営感覚を養えます。

管理会社に任せきりだと、雑な対応をされる可能性がある


管理会社に任せきりだと、対応が雑になる可能性があります。オーナーが物件に関心を示さず、管理会社の提案も放置していれば「ここのオーナーはこの程度で大丈夫だろう」と管理会社も雑な対応をするようになるでしょう。

これを防ぐためには、定期的に管理状況を確認し、必要に応じて管理会社と話し合いを持つことが重要です。

オーナーが積極的に物件に関わることで、管理会社も真剣になります。

管理会社や担当によって質が変わる

管理会社の選択は非常に重要です。会社によってサービスの質が違うからです。また同じ会社でも担当者によってサービスの質に差がでることもあります。

信頼できる管理会社を選び、良好な関係の構築が大切です。

管理委託でなくサブリースという選択肢もある!

管理委託のほかに、サブリースという選択肢もあります。

サブリースとは、不動産会社がオーナーから物件を一括で借り上げ、入居者に転貸する仕組みです。

サブリースの主なメリットとデメリットは下記です。

メリット デメリット
  • 安定した家賃収入を得られる
  • 管理の手間が全くかからない
  • 契約期間中の解約が難しい
  • 賃料減額を要求されることがあり、完全に拒否するのが難しい

サブリースは完全に手離れしたい投資家や、安定した収入を優先するオーナーに適しています。

ただし契約内容をよく確認し、将来的なリスクも考慮する必要があります。

信頼できる管理委託先の選び方

選び方と書かれたブロック、電卓、スマホ

適切な管理委託先を選ぶことは、アパート経営の成功に大きく影響します。

ここでは信頼できる管理会社を選ぶためのポイントを詳しく解説します。

管理戸数が多いか?

管理戸数が多い会社は、豊富な経験とノウハウを持っている可能性が高くなります。

ただし単に営業力が強いだけの会社もあるため、注意が必要です。

無理な営業ではなく、信頼されて戸数を増やしている会社を選ぶことが重要になります。

管理会社の評判や実績を調べ、長期的に信頼関係を築けそうな会社を選びましょう。

入居率を高められるか?

管理会社の重要な役割の一つは、入居率を高めることです。

効果的な募集活動や適切な家賃設定など、空室対策のノウハウを持っているかを確認しましょう。

過去の実績や具体的な戦略について説明を求め、物件の特性に合った対策を提案できるか見極めることが大切です。

担当者が頼りになりそうか?

管理会社との日々のやり取りは、主に担当者を通じて行われます。

そのため、担当者の資質や対応力は非常に重要です。

面談時の印象や説明の分かりやすさ、質問への対応などを通じて、信頼できる人物かどうかを判断しましょう。

また、担当者が頻繁に変わるようでは、一貫した管理が難しくなるため、担当者の定着率についても確認するとよいでしょう。

オーナー目線で寄り添ってくれるか?

管理会社がオーナーの立場に立って考え、行動してくれるかどうかは非常に重要です

よい管理会社は、単に業務をこなすだけでなく、オーナーの立場に立って考え、アドバイスをしてくれます。

たとえば長期的な資産価値の維持向上や、税金対策などについても相談に乗ってくれるかどうかを確認しましょう。

また、オーナーの要望や懸念事項に真摯(しんし)に耳を傾け、柔軟に対応してくれるかどうかも重要なポイントです。


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