賃貸管理コラム

成功事例から学ぶサブリースの失敗を防ぐコツ

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サブリース契約は、アパートやマンションのオーナーに安定的な収入源をもたらす一方で、失敗事例も多い契約です。サブリースとは、物件の管理や運営を専門の会社に委託し、一定の家賃収入を保証してもらえる仕組みです。

サブリースのトラブルになりやすいケースに加えて、過去の事例を踏まえた成功のコツを詳しく解説します。

サブリース契約でトラブルになりやすいケース

サブリース契約とは、賃貸物件の所有者がサブリース会社に物件の運営をすべて任せ、その会社が入居者との間で賃貸契約する方式です。この際、オーナーと入居者は直接の契約関係にないため、サブリース会社が管理業務を一手に担います。これにより、オーナーは賃料収入を安定して得られますが、一方でトラブルに巻き込まれるリスクも伴います。

サブリース契約では、次のような問題が発生しやすいとされています。

  • 突然の契約解除や賃料減額
  • 相場より高額な設備交換費用などを請求されるおそれがある
  • サブリース会社の倒産でローン返済できず
  • 高齢者が悪質営業に狙われやすい

次に詳しく説明します。これからサブリース契約を検討される人は、これらの問題を避けるため、リスク内容をしっかりと理解し、信頼できるサブリース会社との契約を心がけましょう。

突然の契約解除や賃料減額

サブリース契約において、契約期間中にも関わらず、サブリース会社が契約を解除するケースがあります。サブリース会社は物件の借主であるため、契約期間内の中途解約は法律違反にはなりません。物件の立地条件が悪化したり、会社が倒産危機にある場合など、経済的な理由から契約を解除することがあります。

さらに、賃料の減額もトラブルの一因です。サブリース契約では、多くの会社が数年ごとに建物の劣化などを理由に、家賃保証を見直します。賃料減額は法的には有効なため、契約に基づいて実行されます。

賃料が減額されると、物件の経営が赤字に陥るリスクがあり、アパート経営が難航するだけでなく、ローン返済計画にも大きな影響が出る可能性があります。突然の契約解除や賃料の減額は過去に大きな社会問題となり、「サブリース新法」の施行のきっかけにもなったといわれています。

相場より高額な設備交換費用などを請求されるおそれがある

通常、サブリース契約では、エアコンや給湯器などの主要設備のメンテナンスや交換は、物件のオーナーが負担します。しかし、「サブリースで手間がかからない経営が可能」という印象により、管理会社がこれらの費用も負担してくれると誤解するケースが見られます。

さらに、退去後の原状回復をめぐっても問題が発生しやすいです。通常、入居者が負担するべき損傷を除く経年による劣化の修繕費用はオーナーが負担しますが、この点も契約で明確にされている必要があります。

設備の修理や更新に関しては、管理会社がリフォーム会社を選定し計画を立てるため、市場の相場よりもコストが高くつくことが少なくありません。このため、想定外の高額な維持管理費用を請求されると、オーナーとしては経済的な負担が増加し、トラブルに発展するリスクがあります。

サブリース会社の倒産でローン返済できず


サブリース契約において、オーナーが直面するリスクの一つに、管理会社の倒産があります。

あるアパートオーナーのケースでは、契約どおりの賃料が振り込まれていないことに気付き調査を進めたところ、サブリース会社が経営破綻していた事実が明らかになりました。入居者からの賃料はすでに倒産したサブリース会社に振り込まれており、オーナーがそれを取り戻す見込みはほぼありませんでした。

サブリースの構造上、入居者はサブリース会社との契約が主であるため、オーナーが直接入居者の情報にアクセスすることは難しく、賃料の回収や契約の更新などにも手間と時間がかかります。この遅延は、特に賃料をローン返済に充てているオーナーにとって、深刻な金融リスクに直結します。

高齢者が悪質営業に狙われやすい

賃貸経営の知識が乏しい高齢者が、サブリースでの賃貸アパート経営を勧められ自己破産するケースは多いです。特に単身者が社会的に孤立すると、身近な助けや情報を得にくくなります。

不動産の営業トークとして「もうこの家は大き過ぎますよね」「建て替えてアパートにしたら相続税対策になるし、老後の家賃収入も得られますよ」「ローンは入居者が払うのでリスクはありません」などが用いられます。

契約書に「更新時に家賃減額が検討できる」と記していながら「将来家賃が下がらない」などと勧誘する悪質な会社も存在します。

このような営業手法で多く見られるのは、高齢者宅を訪れてちょっとした手伝いをしながら信頼関係を築くことです。電球を交換するなど親切心を見せることで「とても良い人だ」と感じさせ、警戒心を解くのです。

信頼が築かれた後には、強引な契約へと誘導する手法が取られます。一度「考えても良い」といわせたら、具体的な見積もりや設計図を持参し、断りづらい状況を作り出します。「あなたが考えるといったから用意したのですから」とせまり、最終的には断ることが難しい状況に追い込んでいくのです。

高齢者の方々は不動産投資の話には十分に警戒し、提案される情報を慎重に検討する必要があります。

サブリースの成功例から学ぶ失敗しないコツ


ここまで、サブリース契約のリスクをお伝えしましたが、サブリース契約自体は副業で不動産投資をしたい人や、物件管理の負担を軽減したい高齢者などにとって非常に有益です。

また、アパート経営に自信がない人や、手数料を支払ってでも安定した収入を求める人にも適しています。

サブリース契約における成功の鍵は、適切なサブリース会社を選ぶことです。ここでは、サブリースを上手く活用しているオーナーの事例などをもとに、信頼できる管理会社の見極め方を詳しく解説します。

信頼できる管理会社の見極め方

サブリース契約を成功させるために大事なのは、サブリース会社の見極めです。国土交通大臣の許可を受けた会社の中から選びましょう。

日本社会は少子高齢化や単身世帯の増加に伴い、賃貸住宅の需要が高まっています。同時に、相続などを機に賃貸経営を始める経験の浅いオーナーも増加しており、サブリース契約を利用するケースが増えています。

しかし、賃貸経営のリスクやデメリットを十分に説明せず契約を進めるサブリース会社もあります。これが原因で、誤解したまま契約を締結し、後にトラブルに発展するケースが後を絶ちません。このような事態を防ぐため、2021年に賃貸住宅管理業法が施行され、サブリース業への規制が強化されました。

賃貸住宅管理業法では、サブリース会社や賃貸住宅管理会社の条件を満たす不動産会社に国土交通大臣への登録を義務付けています。

サブリース契約を検討しているオーナーは、この登録を受けている賃貸住宅管理会社を選ぶことが重要です。

国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムでは、国土交通大臣が許可した宅地建物取引業者を検索できます。

過去の失敗事例で学ぶサブリース成功の秘訣


不動産オーナーとサブリース会社との間で発生するトラブルは、しばしば「サブリース問題」として社会問題になることがあります。これらの問題は、しばしば不動産業界全体の信頼を損なう要因となり得ます。

過去の事例から学び、サブリース契約の落とし穴を避ける方法を検証します。

かぼちゃの馬車事件はなぜ起きた?

崩れかけているビルの模型と矢印

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズ社の経営破綻は、その不健全なサブリース事業が大きな原因とされています。

このケースでは、シェアハウスという魅力的なコンセプトの下で、不動産オーナーたちはスマートデイズと契約し、高いローンを背負って物件を建てました。その後、スマートデイズはこれらの物件を一括で借り上げ、運営する形式をとっていました。

ところが、運営開始後、実際の入居率は40%以下にとどまり、建設から1年が経過しても空室のままの物件が多く見られました。さらに、2017年の末ごろからはオーナーへの賃料の大幅な減額要求が始まり、2018年に入ると賃料の支払いが停止されました。

サブリース会社が設定した家賃が市場状況とかけ離れていたこと、また空室リスクを過小評価していたことが原因で経営が困窮し、やがては多額の保証金負担を抱える結果となりました。

これは販売利益でカバーするという持続不可能なビジネスモデルが、経営破綻へと直結しました。

サブリース会社の不正により引き起こされた

スマートデイズはかぼちゃの馬車の建設時に、施工会社から50%の法外なキックバック(謝礼)を受け取っていました。高額なキックバックの捻出のために施工費を値上げし、オーナーは一棟1億円以上という額で「かぼちゃの馬車」を購入していました。

通常、オーナーが融資を受けることは難しいですが、スマートデイズはオーナーの資産状況を書き換え資産を多く見せ、融資を行った銀行もそれを黙認しました。

オーナーが自己責任でビジネスを行う必要がある

スマートデイズ社の「かぼちゃの馬車」事件など、不動産会社に問題があったケースは確かに存在します。しかし、不動産賃貸事業を始めようとする人々が営業マンの甘言に誘われ、十分な調査もせずにサブリース契約を進めてしまうことが多いのです。その結果、重大なトラブルに巻き込まれることもあります。

このような事例から学ぶべき重要なポイントは、不動産賃貸事業においては、オーナーが積極的に関与し、情報を収集し判断を下すことが不可欠ということです。不動産会社や運営会社にすべてを任せるのではなく、自らが責任を持った上でのビジネス運営が求められます。

不動産投資は、魅力的な収益をもたらす可能性がある一方で、高いリスクも伴います。オーナーが自己の責任で情報を収集し、リスクを管理することが成功への鍵です。このような自主的かつ積極的な姿勢が、不測の事態に対処し、持続可能な賃貸事業を築く上で重要になります。

次に賃貸経営における注意点を紹介します。

管理会社にどこまで任せるかしっかり考える

賃貸アパート経営を始める際には、管理業務の分担をどのように決めるかが重要なポイントです。

「すべて自分で管理する」と考えるオーナーもいれば、「専門のプロにできるだけ任せたい」オーナーもいます。すべての業務を自分で行うことも可能ですが、ほかの事業を運営している場合や、アパートから遠方に住んでいる場合には難しいでしょう。

専門的な知識が求められる業務や、迅速な対応が必要な事態も発生します。そのため、現実的な選択として不動産会社や管理会社に業務を委託することが考えられます。

管理を委託する際には「どこまで任せるか」を明確にしておくことが大切です。どの業務を外部に依頼し、どの程度の権限を委ねるかを事前にしっかりと決めておくことで、後々のトラブルを防ぎ、スムーズな賃貸経営が可能になります。

市場調査を妥協しない

サブリース会社が提示する家賃設定をそのまま受け入れるのはリスクが伴います。サブリースの契約前には、建設予定地の賃貸市場について独自に詳細な調査を行うことが非常に重要です。地域の賃貸需要や競合物件の家賃相場を理解することで、適正な賃料設定が可能になります。

「数年間は家賃が保証される」などとパンフレットに書かれていても、途中で賃料の減額を求められるケースがあります。このような状況に備えて、契約時には賃料減額の可能性や条件について明確に説明を受け、合意形成を図ることが重要です。

サブリース以外の管理方法も検討する

不動産投資の目的は安定した家賃収入を得ることですが、サブリース契約ではもともとの利益が減少する可能性があります。サブリースのメリットは、不動産経営の安定化にはつながりますが、賃貸管理に関してはほかの方法も考慮するべきです。

物件がオーナーの居住地から遠く、解約リスクが比較的低い場合にはサブリースが適しているかもしれませんが、必ずしもすべてのオーナーに推奨できるわけではありません。不動産市場についてしっかりと学び、リスクを管理しながら自らの管理下で賃貸運営を行うことで、サブリースに依存しない健全な賃貸ビジネスを展開できます。

費用対効果を分析する

サブリース物件の収益性を高めるために、リフォームは重要な役割を担います。サブリース会社が提案するリフォームは、物件の魅力を高めて入居率を向上させることが目的で、内装の刷新、設備の最新化、エネルギー効率の向上などが含まれることがあります。

しかしこれらの提案に対しては、その必要性や予想される効果、そして費用対効果を慎重に評価することが求められます。資金的な余裕がない場合には提案を断る選択もありますが、その際は物件の市場価値や競争力への影響も考慮に入れる必要があります。

リフォームにより賃料を上げることが可能であれば、それが長期的な収益向上につながるかを見極め、投資価値を判断することが重要です。

オーナー自身も空室対策する

サブリース契約は、空室の有無に関わらず固定の賃料収入が保証されることが特徴ですが、空室が増加すると将来的に賃料の減額を要求される可能性が高まります。このため、空室が目立つ場合にはオーナー自らが積極的に空室対策を講じることが求められます。

空室対策にはマーケティングの強化、物件の魅力向上、賃料設定の見直しなどが含まれます。オーナーが自ら手を打つことで、サブリース契約のリスクを管理し、物件の収益性を持続的に高められます。


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