賃貸管理コラム

サブリースの打ち切りを持ちかけられた!原因や打ち切り後の対処法を紹介

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サブリース会社に賃貸経営を任せていれば安心と思っていても、突然打ち切りを持ちかけられるケースがあります。オーナーからすると、どう対処すればよいのかわからず、困惑するでしょう。

なぜ打ち切りを持ちかけられる事態が発生するのでしょうか。原因や具体的な対処法を紹介します。

サブリース打ち切りの原因は?

サブリース会社から契約を打ち切られる可能性のあるパターンについて解説します。

物件の収益性が悪化した

一番可能性が高いのは、物件の収益性悪化によりサブリース会社が利益を得られないと判断した場合です。

サブリースは、以下の図のようにオーナーから借りた物件をサブリース会社が入居者へ転貸する仕組みです。

サブリースの仕組み

引用:東京住宅政策本部「サブリース事業をめぐる諸問題について

つまり、サブリース会社からすると、入居者から受け取る家賃や入居費用などが、オーナーへ支払う賃料を上回らないと利益にはなりません。

しかし、大半の賃貸物件は築年数がたつにつれ人気が低下していくため、いつかは募集家賃を下げざるを得ません。また、景気の変化や周辺の競合物件などによっても、予定より入居率が下がってしまう可能性もあります。

物件の収益性悪化により利益が得られなくなったサブリース会社は、オーナーへの支払いを減らすか契約の打ち切りを持ちかけるしか方法がありません。そのため、サブリースは家賃が保証されるからといって安心できるとは限りません。

オーナーが賃料減額の要求に応じなかった

中途解約までいかなかったとしても、収益性の悪化によりオーナーに賃料の減額を要求する可能性は十分にあります。

総務省の住宅・土地統計調査を基にした分析によると、借家の家賃は非木造で年率約0.7%ずつ低下するとされています。

推計した家賃の経年変化率(年率%)
木造 非木造
経年変化率 -0.886 -0.736
参考:総務省「消費者物価指数における家賃の経年変化率の推計に関する追加分析結果

長期にわたってサブリースを継続している場合、年数が経って募集家賃が当初より大きく下がれば、サブリース会社としてはオーナーに賃料減額を要求することになるでしょう。

その要求に、「話が違う」とオーナーが応じない場合、契約を打ち切られる可能性があります。

サブリースの家賃保証は、「同額でいつまでも」保証することを約束しているものではない点に注意が必要です。

ただし、サブリース会社による賃料減額の要求が必ずしも正当なものであるとは限りません。

独立行政法人国民生活センター「不動産サブリースのトラブル防止のために-賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律-」によると、悪質なサブリース会社による契約打ち切りをめぐるトラブルがあるとしています。

具体的には、「大幅な賃料減額に応じなければ契約そのものを解除する」とオーナーに迫り、オーナーが拒絶すると契約を打ち切り、入居者全員を近隣の自社物件に転居させる例があります。

賃料減額の要求を断ると契約を打ち切られるリスクがありますが、そのまま受け入れるだけではなく、「家賃が下がった」という理由が本当であるか確認する必要があるでしょう。

サブリース会社から解約できる特約があった

基本的にサブリースは契約期間中の解除ができません。しかし、契約書にサブリース会社側から解約できる特約が記載されていれば、契約期間中であっても契約を打ち切られる可能性があります。

サブリースでは、サブリース会社が「賃借人」、オーナーが「賃貸人」という立場です。一般的な賃貸借契約と同様に、賃借人を守るための法律である借地借家法が適用されます。

そのため、オーナーからの解約は難しく、更新拒絶には借地借家法(第28条)による正当事由が求められます。それに対し、サブリース会社側から解約するのは比較的容易であり、貸主であるオーナーの立場は弱いのが事実です。

サブリース会社の経営自体が悪化した

所有物件自体の収益性に問題がなくても、サブリース会社自体の経営悪化により契約を打ち切らざるを得ないケースも考えられます。

国土交通省の「今後の賃貸住宅管理業のあり方に関する提言(案)」でも、「サブリース会社の経営が破綻して、賃料の支払いが停止された」といった苦情や相談が寄せられているとしています。

特に最近では、賃貸住宅管理業法で義務づけられている賃貸借管理業者の登録をしていない、非登録のサブリース会社が破産手続きの開始決定を受ける事例が相次いでいると述べています。

サブリース会社保有・建築した物件を売るのが目的だった

サブリースを提供している会社が不動産会社や建築会社で、投資用不動産の販売や建築も行っているような場合、販売物件のアピールポイントとして「サブリースによる安定した賃貸収入を保証」とうたっていることがあります。

この場合、「オーナーに安心して物件を買ってもらうこと」を目的としています。物件の販売後は、築年数がたって家賃が下がる前にサブリースを打ち切るという悪質なケースもあります。

サブリース打ち切り後の対処法

サブリース会社に契約を打ち切られた場合、オーナーはどうすればよいのでしょうか。契約を打ち切られたあとの対処法について解説します。

物件の管理状況の把握

契約が打ち切られたあと、オーナーがまずすべきことは物件の管理状況の把握です。

サブリース期間中は管理業務をサブリース会社に一任していたため、空き室の数や管理がきちんと行われていたのかなどの点について現状の確認が必要です。

現状を確認した結果、入居率に関係するような問題点が見つかれば改善のための対策を行わないと、新しい会社と契約しても同じような結果になるリスクも考えられます。

物件の現状を把握し、問題点があれば改善策を立てたあとは、今後の契約をどうするかについて考えましょう。

入居者と直接新しい契約を締結する

契約打ち切り後の選択肢のひとつが、入居者と直接賃貸借契約を結ぶ方法です。

打ち切りのリスクはありませんが、オーナー自身が入居者を見つけて募集や管理も行うか、あるいは新たに管理会社を見つけて契約する必要があります。

サブリース会社に取られる利益がなくなる分、収益が増え利益率が上がる可能性がありますが、その分業務の負担が大きく増えてしまいます。

別のサブリース会社と契約する

もうひとつの選択肢が、新たに別のサブリース会社と契約する方法です。

入居者と直接賃貸借契約を結べば、サブリース会社を通さない分利益率は上がる可能性がありますが、増加する業務の負担を考えると一概に得とは限りません。

賃貸経営に不慣れ、あるいは業務を行う時間がないようであれば、サブリース会社に任せたほうがよいでしょう。

ただし、契約を結ぶ前にトラブルにならないようなサブリース会社をしっかり選ぶ必要があります。

新しいサブリース会社と契約する際の注意点

握手する2人とアパートの模型

一部のサブリース会社が引き起こすトラブルがあるとはいえ、サブリースの仕組み自体はオーナーにとって有益です。賃貸管理に不慣れなオーナーでも、プロであるサブリース会社に任せれば、手間が少なく安定した収益を得られます。

安定した賃貸経営を続けるために、新しいサブリース会社を選ぶ際に注意したいポイントについて理解しておきましょう。

高すぎる家賃保証には注意する

高額な家賃保証は魅力的に見えるかもしれません。しかし、サブリース会社が利益を得るためには入居者の滞納や退去のリスクも考慮して、一般的な賃貸借契約よりオーナーに支払う賃料は低く設定されているのが通常です。

家賃保証が相場より不自然に高い場合、「保証が続かない」か「高額な修繕費用など何らかの名目で回収する」と考えて警戒すべきでしょう。

打ち切りの原因を伝える

サブリース会社を変更しても、同様の理由でまた契約が続かなかったら意味がありません。

契約を打ち切られた原因や現状について正確に伝え、サブリース会社が親身に相談に乗ってくれるか、具体的な解決策を提案してくれるかどうかを確認しましょう。

信頼できるサブリース会社であれば、問題を共有しプロの視点から解決に向けて協力してくれるはずです。反対に、「うちは大丈夫です」といったようなあいまいなことしかいわないような会社は信用できないでしょう。

経営が安定しているかを確認する

新しいサブリース会社と契約する際は、その会社の経営安定性を確認することが重要です。設立から数年しかたっていない会社や財務状況が不安定な会社には注意が必要です。

利回りや保証額など物件に関する条件だけでなく、サブリース会社自体の経営状態や信頼性についても確認し、信頼できる会社と契約しましょう。

特に、単にサブリース業務だけでなく、幅広い賃貸管理業務を行っている会社のほうが経営リスクが低く、倒産しにくい傾向があります。

契約内容を明確に伝えてくれるかを見極める

サブリース会社が契約内容や保証について明確に伝えてくれているかを見極めることも重要です。

サブリースに関するトラブルをなくすため、2020年に以下のような「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(通称:サブリース新法)」が施行されています。

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の概要
規制 内容
誇大広告の禁止 実際の契約条件よりもよい条件だと一般消費者に誤認させるおそれのある広告の禁止
不当な勧誘の禁止 誤った情報や不正確な情報による勧誘や強引な勧誘などの禁止
契約締結前における契約内容の説明および書面交付 説明の相手方の属性や賃貸住宅経営の目的などに照らして、契約のリスクを十分に説明する
契約締結時における書面交付 契約内容や費用分担などの条件を記載した書面を交付する
書類の閲覧 業務および財産の状況を記載した書類を要求に応じて閲覧させる

オーナー側のメリットだけでなくリスクについてもきちんと説明を受けているか、説明を受けていないオーナー側に不利な特約が契約書に記載されていないかどうかについても確認が必要です。

サブリース新法の施行により、今後サブリース業界の健全化が進むと考えられます。

オーナー側もサブリースに対する基本的な知識を持ったうえでサブリース会社に相談を行い、信頼できる会社を見極めましょう。


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