賃貸管理コラム
「30年に渡り賃料を保証する」などの甘い言葉で勧誘されてサブリースでの賃貸経営を始めた結果、賃料の値下げを提示されたりして、「やめたい」と思うオーナーもいるようです。
現在でこそ、社会問題として全国的なニュースにも取り上げられたことから、サブリースによるトラブルは減少したといえるでしょう。
なぜサブリースをやめたいと思うオーナーがいるかの背景や、やめたいときに解約できるのかなどを解説します。
現在はサブリースに関する法律が整備されていますが、過去には社会問題となったこともあります。そういった問題点を理解せずにサブリースを始めたオーナーは「やめたい」と思うようです。
サブリースの仕組み上、発生する大きなトラブルのひとつが、契約しているサブリース会社が経営破綻などで支払い不能となることです。この場合、訴訟するにも、訴訟先の会社が倒産しているため、相手がおらず泣き寝入りとなるおそれがあります。
これはサブリースだけの問題ではなく、一般的な賃貸経営でも借主が自己破産、または企業の場合は倒産することが考えられます。しかし、サブリースの場合は基本的に一棟まるごとの契約のため、被害額も膨らむ傾向にあります。
20部屋のアパートであれば、20部屋すべての賃料が突然0円になるわけですから、たちまちローンの支払いなどに困窮することでしょう。
また、建設した物件が建築基準法を満たさないトラブルが発生することもあります。
たとえば、サブリース物件を多く手がけるレオパレス21社では、2019年に1,000棟以上の対価設備の不備など建築基準法違反が判明しました。これは、テレビ東京で放送されているガイアの夜明けの放送により発覚したものです。
ほかにも、後述する賃貸借契約で定めた賃料に関するトラブルや、サブリース契約を結んだ管理会社からの一方的な契約解除などの問題があります。
これまでサブリースは繰り返し社会問題となってきました。記憶に新しいのは、レオパレス21社による錯誤による賃料値下げ訴訟です。
サブリースの問題点として、サブリース会社に権利を握られている点があります。
レオパレス21社の訴訟例を見ると、オーナーはレオパレス21社からの提案によりアパート(いわゆるレオパレス)を建設したあと、30年間の賃貸借(サブリース)契約をレオパレス21社と締結しています。
オーナーはレオパレス21社に多額の建築料を支払い賃貸アパート(レオパレス)を建築し、それをレオパレス21社に貸し出しました。得られるサブリース料(賃料)から、利益を含む建築料などを回収する仕組みです。
しかし、30年間オーナーが思い描くとおりの賃料をレオパレス21社が支払わず、契約途中に賃料の減額を申し出を行いました。ここで問題なのは、「提示金額にて合意しなければ、契約上より低い賃料になる、または契約解除となるかのように、わざと誤解させた」ことです。
この誤認行為を「錯誤(勘違いによる無効行為)」として訴訟がなされたものです。
こうした問題は、レオパレス21社のみならず、同じくサブリースを全面に取り扱う大東建託社でも発生しています。
また、サブリースについては、増税による節税効果を目的として2015年が建設のピークでした。そのため、よくある10年保証の最終年となる2025年に大きな問題が発生するのではないかと、不動産業界では予想されています。
ここまでサブリースの悪い面を紹介しましたが、前述した社会問題化を受けて、2021年に「賃貸住宅の管理業務などの適正化に関する法律」が成立し、同年末に施行されました。これは通称サブリース新法とも呼ばれる、オーナーを守るための法律です。
サブリース新法により、新たに義務づけられた条項は以下のとおりです。
これにより、サブリースの社会問題にもつながった途中解約、賃料の見直しが明文化されるようになりました。
広告と記載するとチラシのイメージがありますが、ホームページやSNS、また電話や対面での口頭説明も対象です。
具体的には「絶対に儲かります!」「損はさせません!」といった表現や「サブリースによる30年間賃料保証!」などを記載した場合、企業には記載内容を遵守する責任が生じます。
特に30年間賃料保証の記載は、全額なのか一部なのかが明記されておりません。これにより、オーナーが全額だと「錯誤」していた場合、サブリース会社は全額補填するか、解約(契約の無効)を受け入れるかの選択を迫られるため、誇大広告の規制につながっています。
誇大広告とともに執拗な勧誘、不適切な営業行為も禁止されています。
サブリースにはメリットもありますが、デメリットも存在します。これらを正確に伝えず、よい面だけを説明することは不当な勧誘行為です。
これまでサブリース契約による書面交付は義務化されていませんでしたが、一般的な賃貸借契約書と同様に交付と説明が義務づけられました。
長期運用を行う過程で、サブリースの契約を解約したいと考える人もいるでしょう。ただし、1度契約を締結すると、オーナーは貸主の立場となるため、解約は決して簡単ではありません。
サブリースのためにアパートを建てる際は顧客の立場だったはずが、いざサブリースを始めると立場が逆転しているためです。
「賃貸住宅の管理業務などの適正化に関する法律」が施行された2021年より以前の契約では、貸主であるオーナーからの途中解約における契約条項が不明(契約書に記載がない)ケースも少なくありません。
そのため、借主となるサブリース会社は、借地借家法により保護される立場となります。借主は一方的な途中解約の権利が認められますが、貸主からは難しいという状況が発生します。
不動産のプロであるサブリース会社が保護されて、不動産の素人であることが多い個人(オーナー)が不利になる法律に違和感を覚えるかもしれませんが、現実問題としてのしかかっているのも事実です。
一般的な賃貸借契約と同様に、貸主側から途中解約を申し入れするには正当事由が必要です。
ただし、正当な事由には法律上に定めがあるわけではありません。双方の合意が得られない場合は、個人の事情や過去の判例などを含めて裁判所が判断します。
主な正当事由としては、以下が考えられます。
これらを満たす=正当事由となるわけではなく、あくまで事由のひとつとされるため、結局は借主であるサブリース会社の合意が必要です。
結果的に、立ち退き料とも呼ばれる金銭を話し合いの落とし所とするのが一般的です。
締結したサブリース契約を解除するには、まずは契約書面の確認を行いましょう。書面に途中解約に関する記載(=解約条項)があれば、解約を申し入れする期限や違約金など記載に従って手続きを進めていきます。
実際には、解約を通知する書面をサブリース会社に送付します。そのとき、到着したことがわかるよう、内容証明郵便を利用するのが最善です。
通知により同意が得られる場合は問題はありませんが、拒否された場合は正当事由を準備して交渉します。難航する場合、裁判所など法的機関に仲裁を依頼する必要があるため、できるだけ早いタイミングで専門家に相談するとよいでしょう。
サブリースをやめたい理由が、サブリース会社との相性であれば、管理会社に委託するなど、さまざまな対処法があります。
本来、サブリースは節税と長期収入の安定の両軸の効果が得られる手法です。そのため、解約する前に、よい改善方法がないかを検討しましょう。
サブリース会社との関係にストレスを感じるかもしれませんが、サブリースは手間の少ない資産運用のひとつです。
始めるまでに検討するべき点が多いですし、ある程度の資産やローンを組む必要があるなどハードルは高いでしょう。しかし、始めてしまえばサブリース会社に任せておくだけ、ともいえます。
手数料はかかりますが、手間なく安定収入を得られるため、投資初心者や複数物件のオーナー、別に本業があるオーナーなどに向いた手法です。
アパートの維持管理からすべてを任せるため、サブリース会社の選定は重要です。
もし、サブリース会社の対応に違和感を覚えた場合は、パートナーの変更を検討してみましょう。
サブリース会社の変更を行うには、一度サブリース契約を解除し、新たに契約する必要があります。ハードルが高そうに見えますが、試してみる価値はあります。
サブリースによる賃貸経営を改善するためにも、現在依頼している会社以外のサブリース会社に相談してみるとよいでしょう。現状より魅力的な提案を受ける可能性もありますし、反対に現状が実は恵まれていると気づくきっかけになるかもしれません。
サブリース新法の施行により生まれ変わったサブリース業界のいままでと違う魅力を知れるよい機会です。そのため、積極的に行動することをおすすめします。
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