賃貸管理コラム
戸建て賃貸のオーナーチェンジ物件は、入居者がいる状態で新しいオーナーに代わります。そのため家賃は、物件が売買されたあとから新オーナーの収入になります。
購入後に、すでに決まっている家賃設定を変更するのは難しいでしょう。そのため、新しいオーナーは現状の利回りを把握しつつも、将来的な利回りの変動についても考えておく必要があります。
戸建てのオーナーチェンジ物件ではどれくらいの利回りを目指すべきなのか、また物件選びの際に注意するポイントなどを具体的に解説します。
戸建てのオーナーチェンジ物件は、どれくらいの利回りが理想なのでしょうか。新築する場合と比べてみましょう。
戸建てのオーナーチェンジ物件は、入居者がいる状態での売買になります。そのため購入後に入居者の退去がなければ、表面利回りは購入前後で変わりません。
利回りは、主に以下の2種類あります。
それぞれ、以下の計算式で求められます。
表面利回り(%)=年間家賃収入 ÷ 物件取得価格 × 100
実質利回り(%)=(年間家賃収入-必要経費) ÷ 物件取得価格 × 100
必要経費には修繕費やローン返済を含むため、実質利回りはオーナーの考え方や購入時の資金計画に影響を受けます。
売却時に売主が必要経費を明らかにすることは少なく、購入するオーナーの設定により初めて明らかになります。
戸建て賃貸の利回り相場は、5~10%が目安と考えられます。しかし、以下のような傾向があります。
新築物件のほうが中古物件より、土地と建物の価格が高いです。家賃相場も新築のほうが高いですが、物件価格の差ほど家賃設定に差がありません。そのため、新築のほうが利回りが低い傾向にあります。
また、地方の物件は土地の評価額が都市部の物件よりも安いですが、家賃設定は土地価格の差ほど地方と都市部とでは生じません。そのため、都市部の物件のほうが利回りは低くなるのです。
オーナーチェンジ物件の場合は、オーナーの事情により売り出されるため、売りやすさを考慮して高い利回りになる価格設定をしているケースも多いでしょう。
オーナーチェンジ物件を購入するのであれば、利回りは10%に近いほどよいといえます。利回りが10%であれば、10年間で投下資本の回収が可能です。
5%の利回りでは回収が20年かかってしまい、築年数の経過した物件では回収が難しくなります。
物件を探していると、15~20%などの高利回りの物件を見つけることもあります。高い家賃設定をしているとは考えられないので、物件価格が極端に安い物件といえるでしょう。
一方で、安い価格にも理由があります。大規模修繕の時期がとっくに経過しており劣化が進んでいる物件や、入居者から修繕請求が来ている物件もあります。
利回りだけに着目せず、購入後に必要な修繕箇所の洗い出しをしっかり行う必要があるでしょう。
次で詳しく説明しますが、それ以外にも高利回りの物件でありながら注意が必要な物件もあるため、慎重に検討する必要があります。
オーナーチェンジ物件のなかには、注目したい「高利回り物件」もあります。利回りだけを見ると好物件と思いやすいですが、慎重に検討すべきポイントがあります。
家賃設定がエリア内では標準的でも、物件価格が相場より安いと利回りが高くなり、一見「掘り出し物」です。
しかし、オーナーチェンジ物件で利回りの高い物件は、特殊な事情で物件価格が相場よりも安い可能性があります。主に売主が売却を急いでいるケースで考えられます。
オーナーチェンジ物件は入居者がいる状態で購入しますが、購入直後に退去するケースもあります。その場合、新規の入居者が短期間で決められるかどうかを検討する必要があるでしょう。
個別的な事情で入居者がいるだけで、戸建て賃貸の需要は低い地域かもしれません。現在の入居者が退去した場合を想定し、物件仕様や家賃設定の見直しを行い、投資条件に見合う物件かどうかを検討しましょう。
高利回り物件は築年数が経過した物件が多く、出口戦略を立ててから購入するのが重要です。出口戦略とは、どのように投資を終了させるかの計画のことです。
上記のように、購入時に将来の売却計画を明確に描けるかどうかが重要です。
売却の可能性が低い立地条件では難しいでしょう。また立地がよくても周辺で大規模開発が行われ、物件としての魅力が減るおそれもあります。
築古物件のなかには、大がかりなリフォームやリノベーションを必要とする物件もあります。そういった物件の場合、将来現在の入居者が退去したあとに、物件再生をしなければ新規入居者の募集は難しいでしょう。
購入時には高利回りでも、再生費用の再投資で利回りは大きく減少します。
たとえば15%の高利回り物件で物件価格と同額でリノベーションした場合、家賃設定が変わらなければ利回りは7.5%に半減します。
再生に伴う家賃の改訂が可能でも、購入時の利回りまで回復させることは難しいです。そのため、事業目標に見合った再生戦略が描けるかどうかがポイントになるでしょう。
オーナーチェンジ物件の購入を決断するときに注意したいポイントがいくつかあります。
準備は入念に、購入前から備えておくべきです。では物件を購入する際の注意点とはどのようなものがあるのでしょうか。
オーナーチェンジ物件は購入時に入居者がいるため、家賃収入がすぐに手に入ります。しかし、いずれ現在の入居者は退去するため、新規入居者募集の準備は心がけておく必要があります。
また、購入直後に入居者から修繕請求が来たり、大規模修繕の時期が到来したりするケースもあります。さらに戸建て住宅は10~15年ごとに、外壁や屋根の塗装などの大規模なメンテナンスが必要です。
利回りの計算では、再投資分を加えて考えておきましょう。前述した再生戦略は入居促進のために投じる費用ですが、大規模修繕は建物を維持するために必要な費用です。
入居者の退去がなく満室が継続したとしても、必ずかかる費用であることを忘れてはいけません。
オーナーチェンジ物件では、前のオーナーが管理委託をしていた場合は、管理会社を引き継いでいます。この場合、以下のような選択肢があります。
管理会社の変更あるいは管理方法の変更は、実質利回りに影響します。
必要経費を削減できると利回りは上昇しますし、経費が増加すると利回りは悪化します。管理会社を変えると、費用の圧縮や無駄な経費の検証、そして効率的な管理など、経費を節減できる可能性があります。
これまでの管理方法を踏襲するのではなく、見直すことも必要です。
利回りは、入居者がいて家賃が安定して入るからこそ計算できるものです。空室が続くと、戸建ての賃貸を経営しても収入がまったくない状態になります。
利回りだけに着目するよりも、確実に家賃収入を安定的に得られる方法を選択することも必要です。
サブリースは、サブリース会社に管理業務を含めて賃貸し、サブリース会社が入居者を募集して転貸する方式です。オーナーは空室であっても家賃収入が確保でき、面倒な管理業務は管理会社に一括して依頼できます。
空室期間が生じた場合は、家賃収入を得ながらリフォームやリノベーションをして築古物件を再生させる方法を採り入れることもできます。
少しでも利回りを高くする考え方もありますが、サブリースで安定性を優先させる考え方もあります。まずは、実績が豊富で信頼できるサブリース会社に相談してみて、いくつかの方法を比較検討してみるのをおすすめします。
ピックアップコラム