賃貸管理コラム
不動産投資で安定した運用ができているオーナーであれば「より大きな資産形成をするために規模を拡大したい」と考えているかもしれません。
拡大戦略としては、物件数を増やすか、いまの物件を売却してより資産価値が高い新しい物件を購入するかの2パターンがあります。
しかしどちらの場合でも、安易に規模を拡大しようすると失敗するリスクが高くなってしまいます。ここでは、不動産投資の拡大戦略を成功させる方法やリスク軽減について徹底解説します。
まず、不動産投資の拡大戦略を実行する前に、4つのポイントを確認しておきましょう。
当然のことですが、目的や目標が定まっていない状態で規模を拡大しようとしても計画が立てられません。必ず「なぜ規模を拡大するのか」「いくらの収益がほしいのか」といった目標を明確化しましょう。
目標を明確にすれば、購入する物件や運営方法の選択肢を絞れたり、資金計画が立てやすくなったりします。目標を立てていない方は、拡大戦略を考えるとき、最初に目標を立てましょう。
現在の自身の資産状況を把握しておくことも重要です。具体的には、以下のような項目が挙げられます。
これらの資産のうち、どの程度不動産投資に回せるのかを見極めておきましょう。
一般的には資産の半分を目安として考えておくと、余裕を持って規模の拡大ができる可能性が高いです。
自己資金が十分にないと緊急時の対応ができなかったり、融資審査に落ちてしまったりするので、不動産投資の規模の拡大は見送ることをおすすめします。
そもそも最初に投資した1棟目の経営状況が安定していないと、規模を拡大しても失敗するリスクが高いです。
1棟目の経営状態が悪く手出しが発生している状態で規模を拡大すると、資金的な余裕がなくなってしまうでしょう。
そのような事態に陥らないためにも、まずは1棟目の経営を安定させてから、2棟目の購入を検討しましょう。
専業のオーナーには関係がありませんが、特に公務員の方の場合は副業規定に抵触するのかを確認しておきましょう。
具体的には、①不動産投資の規模が5棟10室以上、②家賃収入が500万円/年以上、③管理委託をしていない、となると副業規定に抵触してしまいます。安易に規模を拡大すると、最悪のケースでは懲戒免職になってしまうおそれもあります。
もちろん、会社員の方も例外ではありません。会社によって事業的規模になると会社の副業規定に抵触してしまう可能性があります。
公務員や会社員の方は、規模の拡大をする前に副業規定を確認しておきましょう。
事前確認を行ってしっかりと準備ができたら、いよいよ不動産投資を拡大していきます。
具体的な手順は以下のとおりです。
上記の各工程について詳しく解説します。
規模拡大の目的や目標を決めて実現可能と判断ができたら、まずは資金計画を立てましょう。
不動産投資は、さまざまな場面でまとまった資金が必要です。そのため、2棟目を購入してもキャッシュフローがマイナスにならないように、手元に現金が残るようにしておきましょう。
資金計画を立てれば、物件を購入するための予算も決められます。規模を拡大してから想定と違ったという事態にならないためにも、綿密な計画を立てましょう。
また、資金計画を立てる際は想定事業収支表を作成し、10年程度の収支予測を作成することが重要です。
さらに、将来的に想定される修繕費などが必要な経費についても、ある程度把握し、どの程度のキャッシュフローがあれば問題ないのかもよく検討する必要があります。
物件を購入するための予算内で購入する物件の選定を行います。
選定基準は1棟目の物件取得時と同様に、安定して収益が得られる優良物件を選びましょう。安定した収益が見込めないと、規模を拡大したにも関わらず資金を減らす結果になってしまいます。
物件を選定する際のポイントは以下の5つです。
また、複数物件を経営する場合は、既存の物件と違うエリアや築年数の物件を選ぶことをおすすめします。
たとえば、同じエリアに物件がある場合、災害などによる被害が同時に発生するおそれがあります。また、築年数が近いと、修繕を同じタイミングで必要になる可能性が高いです。多額の出費が発生すると、資金繰りに苦労するでしょう。
物件の選定が済んだら、金融機関へ融資の申し込みを行います。審査内容は年齢や年収などの個人の属性に加えて、物件の収益性や担保としての評価などです。
また、1棟目の経営状況も審査基準のひとつです。金融機関は不動産オーナーとしての信頼性があるとわかると、ローン滞納する可能性が低いと判断されて有利に審査してもらえる可能性が高いです。
融資が通らない場合は、自己資金を増やしたりして、1棟目の経営を安定させるようにしましょう。
無事審査に通過して融資を受け、不動産投資の規模が拡大すると所得が増えるため、税金の負担が大きくなります。そのため、税金対策もしっかりと行いましょう。
不動産所得の金額は、以下の計算式で求められます。
参考:国税庁「不動産所得の計算方法」
つまり、必要経費に含められる金額が多いほど、不動産所得を抑えられて節税できます。
必要経費には、たとえば以下のようなものがあります。
必要経費を漏れなく計上し、手元にしっかりと現金が残るようにしましょう。
不動産投資の拡大には当然リスクが伴います。ここで紹介するリスク軽減のコツをしっかりと押さえて、規模を拡大しても安定した経営を目指しましょう。
不動産投資の最大のリスクは、収入に直結する空室のリスクです。
空室リスクを軽減するには、入居者が退去しないように適切に物件を管理することが重要です。そのため、信頼して物件の管理を任せられる実績や経験が豊富な管理会社を探す必要があります。
1棟目の物件の管理を管理会社に依頼している場合は、その会社に依頼してもよいでしょう。複数物件の管理を一括でできるため、手間を省いて効率的な経営ができるメリットがあります。
しかし、物件の場所によっては、ほかの会社に依頼したほうがよいケースがあります。
管理会社によって得意・不得意があるため、たとえば都心部のマンション経営が得意な管理会社に地方の戸建て経営を依頼しても、十分な成果が得られないおそれがあります。
また、管理会社が倒産するリスクを分散できるメリットもあります。
日本は地震大国のため、経営している物件が地震によって損壊や倒壊するリスクがあります。そのような事態になってしまうと、修繕が完了するまでの期間は家賃収入がなくなるうえに、多額の修繕費用が必要です。
そのため万が一に備えて、地震保険に加入しておくことをおすすめします。
地震保険に加入しておけば、地震が起きた際の修繕費用負担を軽減できます。ただし、修繕費用が全額補償されるわけではないので注意が必要です。
不動産投資において出口戦略を考えておくことは重要です。出口戦略とは、簡単にいうと不動産投資をどのように終了させるかの戦略のことです。
たとえば、築年数が古くなってしまうと入居率が低下する可能性が高くなり、安定した経営が難しくなるでしょう。
しかし、投資物件を売却して利益が残るなら、不動産投資は成功といえます。あらかじめ投資物件の売却を含む出口戦略のタイミングを検討しておけば、不動産投資に失敗するリスクを軽減できます。
サブリースとは、サブリース会社が物件を1棟ごと賃借し、入居者にまた貸しをしてオーナーに代わり賃貸経営を行う運営方式です。
物件の維持管理や入居者募集などの大家業務は、すべてサブリース会社が行ってくれます。
また、サブリース契約で定められた金額が毎月オーナーに支払われるため、家賃滞納のリスクもありません。満室時の家賃収入の約80%にはなりますが、家賃滞納リスクや管理の手間などがないため、拡大戦略としてはおすすめのサービスです。
リスクを軽減したい方や物件が増えて管理が大変だと感じている方は、サブリースの利用を検討してみましょう。
ピックアップコラム