賃貸管理コラム
戸建てを購入したあとに、突然の転勤や子どもの独立などをきっかけに引っ越しをする場面が訪れることがあります。しかしせっかく高い金額で購入したものを売ってしまうのはもったいないと、賃貸に出すことを検討する人は少なくないでしょう。
また不動産投資の一歩目として、アパートなどの集合住宅はハードルが高く、戸建て賃貸から始めようと考える方も多いようです。
本記事では戸建てを賃貸に出す流れや基礎知識を詳しく解説します。また実際に経営を始めるときの注意点も紹介するので、特に始めての方は必見です。
戸建ての賃貸は不動産投資の中では手が付けやすい反面、基礎知識が足りない故のトラブルが起こります。ここでは、戸建ての賃貸オーナーになるために必要な基礎知識を紹介します。
戸建てを賃貸に出すまえに、以下のようなメリットとデメリットを把握しておきましょう。
メリット | デメリット |
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戸建て賃貸の特徴は、入居者が決まると長期で安定した収入が見込める一方、入居者が決まらないと一切収入が入らないリスクがあることです。
デメリットの項目を解決していくことが、戸建てを賃貸に出すうえで重要です。
収入と支出の把握をおろそかにしていると、家賃収入が入っても総収入がマイナスになるおそれがあります。
戸建ての賃貸における主な収入と支出は、それぞれ以下のとおりです。
項目 | 説明 |
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家賃収入 | 経営のメイン収入です。周辺相場のリサーチを基にした家賃設定が必要です。 |
礼金 | 入居者募集時に、礼金を設定している場合に得られます。利用用途の指定はありません。 |
補助金(地域によって異なる) | 空き家対策の一環で、リフォーム代を補助してくれる地方公共団体があります。年ごとに内容が異なるので、対象地域の役所に確認が必要です。 |
項目 | 説明 |
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管理手数料(不動産会社に委託する場合) |
物件の維持、以下のような管理に必要な業務を不動産会社に委託するための費用です。
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補修費用 | 退去時の原状回復や、入居中に故障した設備を補修する際に必要な費用です。入居者の入居期間が長くなると金額が高くなる傾向があります。 |
設備維持費用 | 「浄化槽清掃費」「テレビ受信費用」など地域によって特殊な設備費用がかかるケースがあります。物件を購入する際は5年分のレントロール(資料)を不動産会社から取り寄せて、設備維持費を確かめましょう。 |
火災保険費用 | 法律上必須ではありませんが、火災保険には必ず加入しましょう。 |
ローンの返済金(銀行から融資を受けた場合) | 銀行への返済が毎月あります。満室か空室かに問わず返済が必要なので、ある程度の資金は手元に残しておきましょう。 |
固定資産税 | 不動産の所有者に対して毎年課せられる税金です。 |
アパートやマンションと比較すると、独立した居住空間を確保できる戸建て賃貸は以下の特徴があります。
また、アパートやマンションでは解決できない問題を抱えている以下のような方からの需要があります。
戸建て賃貸は集合住宅と比べて希少価値が高いので、需要に適した物件を的確に提供できるかがポイントです。
アパートやマンションとは違い入居期間が長い特徴があるので、一度入居者が決まると安定した収入が見込めます。
一般的に戸建てを賃貸に出す際は、経験や知識が豊富な不動産会社に委託することが多いです。
自宅として利用していた場合は、リフォームしてから入居者へ貸し出すことがほとんどです。リフォームのタイミングは管理会社決定後、管理会社と打ち合わせをしながら決めましょう。最近の傾向に合わせた提案を得られます。
ここからは、戸建てを賃貸に出す流れを詳しく紹介します。
不動産会社を選ぶときは、集客力と管理業務能力の2点に注目する必要があります。不動産売買に定評がある会社が、必ずしも賃貸も得意とは限らないので注意しましょう。
また収入の安定を重視する場合は、サブリースも有効な方法です。サブリースとは物件をサブリース会社に貸し出し、サブリース会社が転貸契約で入居者を見つける方法で、以下のメリットがあります。
興味がある方は、サブリース会社に相談してみましょう。
任せる管理会社を決めたら、管理委託契約を締結しましょう。管理委託契約は複数社と締結できない点に注意しましょう。
契約時は、以下の項目が重要です。
収入に影響する部分なので、しっかりと確認しておきましょう。
契約を締結したら、家賃などの募集条件を決めます。不動産会社のアドバイスをもとに、マイナス経営にならない募集条件を決めましょう。
条件のすり合わせが完了したら、入居者の募集を開始します。最近はインターネットでの集客がメインです。
入居希望者から問い合わせが入ったら内覧などを行い、契約につなげていきます。家主自らが入居希望者を見つけたときは、管理会社に伝えましょう。
入居希望者が申込書記入後、申込書の情報と、身分証明書類を基に不動産会社が審査を行います。審査時に家主の了承を取るかは、不動産会社によって異なります。
なお、主な審査内容は下記のとおりです。
細かい審査内容は不動産会社によって異なり、申込者に問題がある場合は審査落ちとして、再度募集をかけます。
問題がなければ契約手続きに進み、契約を締結します。
そのあと不動産会社が入居者に鍵の受け渡しをして手続き完了です。契約金は管理委託契約書の内容に従い送金がされます。
ここでは、戸建ての賃貸で注意するポイントを紹介します。
住宅ローンを組んでいる場合は、無断で賃貸に出すと契約違反になります。違約金が発生したり、残債の一括返済が求められたりするおそれがあります。
住宅ローンは契約者本人が居住するために購入する不動産や諸経費を借り入れることが目的だからです。居住を目的としなくなった場合は、住宅ローンから賃貸住宅ローンなどに変更する必要があります。
例外として、賃貸併用住宅としている場合は、住宅ローンを引き続き利用ができます。建物の半分以上を自己居住用として利用していることが条件です。この場合は、住宅ローン控除を受けられます。
家主都合で入居者を退去させられないため、賃貸に出したあと、将来的に自宅として取り戻したい場合は注意しましょう。
正当事由が認められれば入居者を家主都合で退去させられますが、正当事由が認められるケースはまれです。
上記のようなケースでは、入居者が住み続ける意思を示した場合、退去させられません。賃貸借契約を更新するタイミングでも、退去させることができないので注意しましょう。
定期借家契約であれば、期間を定めた契約が可能です。期間を定めた契約を希望する場合は、不動産会社に相談しましょう。
入居者選びは基本的に不動産会社が行いますが、契約するプランによってはオーナーが行うこともあります。
リスクを抑えるには、特にここで紹介する属性の申込者について慎重に検討するとよいでしょう。
月々の家賃滞納リスクが低い点がメリットです。
ただし退去時精算で補修費用が払えず、トラブルになるケースがあります。入居時費用は役所が負担しますが、退去時費用を役所は負担しません。
入居時に礼金などで退去時補修費用を確保しておくと、リスクを抑えられます。
文化の違いでトラブルになるケースがあります。ゴミステーションの使い方で問題になることが多いようです。
日本語で注意しても伝わらないおそれがあるため、トラブル解決までに時間がかかります。
入居後も過剰な要求をされるおそれがあります。入居後にトラブルになると感じたら、契約を見送る判断が大切です。
入居中のトラブルはすべて管理会社が対応してくれます。
設備不良などの金銭が絡むトラブルの場合は、対応方法と必要な費用の提示があります。対応が遅れると二次被害を生むおそれがあるため、不動産会社の指示に従うことが無難です。
安定した収入を考えるのであれば、サブリースを利用しましょう。
サブリースの場合、サブリース会社への手数料が必要なため、一般的な管理委託の満室時と比較すると約8割の家賃収入になります。ただし、空室期間も一定の収入が入ります。
戸建ての場合、物件はひとつなので入居者が決まらないと収入はゼロになってしまいます。そのリスクを考えると、年間収支予想を立てやすいサブリースを利用するメリットは大きいでしょう。
また物件をサブリース会社にまるごと貸し出すため、管理の手間がかかりません。特に不動産投資が初めての方は、経験が豊富なプロに依頼するほうが安心です。
まずはサブリース会社に相談して、どのような経営が可能か、提案をしてもらいましょう。
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