賃貸管理コラム

サブリースの2025年問題を徹底解説。賃料の値下げは避けられない?

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サブリース2025年問題、という言葉を聞いたことはあるでしょうか。これは、2015年に急増したサブリース物件の家賃が大幅に値下げされると予想されている問題です。

サブリース物件のオーナーは、2025年問題を想定した経営が求められることになりそうです。

本記事では、サブリース2025年問題を筆頭に、サブリース経営に影響を与える要因について解説します。また、それを踏まえて、今後サブリース経営はどういったポイントに注意すべきなのかも確認しておきましょう。

サブリース2025年問題を考える

サブリース2025年問題とは何か理解するには2つの側面から考える必要があります。

  • 2016年1月1日から施行された相続税法改正
  • サブリース契約の問題点

これらを踏まえて、2025年に起こるとされているサブリース経営の問題点について解説します。

相続税法改正

2016年1月1日施行の相続税法改正により、これまで相続税の課税対象外だった人が課税されるようになりました。

もともと、相続税に適用されていた基礎控除は以下のとおりでした。

5,000万円+1,000万円 × 法定相続人数

しかし、改正後は以下のように変更されました。

3,000万円+600万円 × 法定相続人数

たとえば相続人がひとりだった場合、遺産から6,000万円を控除できていたものが、改正後は3,600万円の控除となりました。つまり、遺産額が3,600万円超から6,000万円以下の場合は、相続税が課税されます。

この改正により、課税される人が全国で数%増えると予想されました。課税対象となる可能性のある人たちを対象とした相続税対策ビジネスが盛んになり、現在も続いています。

サブリース契約の問題点

相続税対策としては、不動産による節税対策が有効な方法です。現金や預金の相続と違い、不動産の相続は課税される評価額が低減されるためです。

さらにアパートやマンションなどの賃貸用不動産は、借地権割合や借家権割合により評価額を低減できます。そのため、相続税対策として注目されています。

サブリースは、相続税対策として注目される賃貸経営における運営方式のひとつです。

サブリースとは

そもそもサブリースとはどういった仕組みのものか確認しておきましょう。

アパートやマンションの経営はオーナーが自ら管理するケースもありますが、管理会社に管理業務を委託するオーナーも多くいます。

その中でもサブリースは、管理や運営をすべて任せられる、転貸事業のことです。オーナーはサブリース会社と賃貸借契約を締結し物件をまるごと貸して、その後サブリース会社が入居者を募集して転貸借契約を締結します。

マスターリース契約
オーナーとサブリース会社との賃貸借契約
サブリース契約
サブリース会社と入居者との転貸借契約

上記2つの契約を結ぶ賃貸経営の方式を、一般的にサブリースと呼びます。

家賃の値下げに関する問題点

オーナーとサブリース会社が結ぶマスターリース契約は、一般に30年などの長期で契約します。その際、オーナーに支払う家賃の設定は、満室時家賃の合計に対して80~85%が多いです。

しかし、この家賃設定は、契約期間中一定というわけではありません。

入居率が悪化した場合、当初から設定している家賃をオーナーに支払うと、サブリース会社は赤字経営に陥るケースがあります。そのため契約期間中であっても、サブリース会社からオーナーに対して家賃値下げ請求が行われ、トラブルに発展することが多々あります。

オーナーは家賃値下げ請求に対して、拒絶するあるいは賃貸借契約を解約することが非常に難しいです。

その理由として、マスターリース契約が借地借家法の適用を受けることがあります。

借地借家法では、賃貸人よりも賃借人の権利が保護されます。そのため、マスターリース契約でも、賃借人(借りる側)であるサブリース会社の権利が保護され、賃貸人(貸す側)であるオーナーからの一方的な契約解約はできません。

ビジネスに関わる契約でありながら借家権が守られるため、サブリース事業者にとって有利な契約形態になっていることが問題となりました。

サブリース2025年問題とは?

2016年に改正された相続税法は、将来相続課税される可能性の高い人や、相続税に関係する事業者に大きな影響を与えました。事業者はビジネスチャンスと捉え、消費者は相続税対策の必要性を考えるようになりました。

賃貸用不動産は相続税対策のひとつですが、入居者がいなければ経営は成り立ちません。

そこで2015年には相続税対策を目的とした、サブリース方式のビジネスが増加しました。

オーナーとサブリース事業者とのマスターリース契約は、契約期間30年のうち、2年間は家賃を一定にするとしたものが多いです。

つまり、2015年に急増したサブリース物件が、築10年を迎える2025年は家賃が見直される時期です。

また、2025年には団塊世代が全員75歳以上になる年です。アパートやマンションなどの賃貸物件に住む年齢層の割合が、2025年には大幅に減ると予想されています。

これらのことから、2025年には、サブリース会社から大幅な家賃値下げ請求をされる可能性が高いです。

サブリースは、オーナーよりもサブリース事業者の権利保護が強い契約です。オーナーから解約することが非常に難しく、家賃値下げ請求を受け入れざるをえない状況になることが2025年問題といわれています。

オーナーはローンの返済すら厳しくなる可能性があることが予想されます。

サブリース経営に影響を与えるサブリース新法

弁護士

サブリースには前述したような問題点がありましたが、その対策として2020年12月15日よりサブリース新法が施行されました。

サブリース新法が成立した背景

サブリース経営は、サブリース会社とオーナーとの間にある、情報や知識量の差が問題の本質です。高い専門性を持つサブリース会社に比べ、オーナーの知識、経験は少ないものです。そのため、オーナーの権利保護を行う仕組みが必要とされました。

なかでも法整備のきっかけとされるのは、かぼちゃの馬車事件といわれる、サブリース事業者の経営破綻でした。この事件を受けて、2018年10月国土交通省は「今後の賃貸住宅管理業のあり方に関する提言」を発表し、サブリース事業を含めた賃貸住宅管理業に対する法整備に着手しました。

2020年6月には、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が成立します。「賃貸管理業法」や「サブリース新法」とも略称されています。

サブリース新法は以下の2つが主な目的です。

  • 賃貸管理業者の登録義務づけ
  • サブリース事業を行うサブリース会社への規制

サブリース事業者への法適用は2020年12月15日より行われています。

賃貸管理業者の登録義務づけ

サブリース事業者を含む、賃貸住宅管理業者は国土交通大臣の登録が義務となっています。

ただし、管理戸数の少ない事業者は登録を免れることができます。管理戸数の目安は200戸です。

登録には以下のような要件があります。

  • 業務管理者(宅地建物取引士など)の専任
  • 管理受託契約前の重要事項説明書交付と説明および契約書の交付
  • 業者資金と管理委託するオーナー資金の分別管理

サブリース会社への規制

サブリース事業を行うには、以下の規定を遵守しなければなりません。

  • 誇大広告の禁止や不当な勧誘の禁止
  • サブリース事業に係るマスターリース契約前の重要事項説明書交付と説明および契約書の交付

これまでは、下記の重要な事項について、説明しないあるいはあいまいな説明をし、オーナーに誤解を与えていたと考えられます。

  • 将来的に家賃が変更(減額)される可能性
  • オーナーからの契約解約は正当事由が必要

そのため、サブリース事業者はオーナーに対し重要な事項を、マスターリース契約前に書面に基づいて説明することを義務づけました。

さらにサブリース事業をオーナーに勧誘する際、サブリース事業者以外の勧誘者が事業者に代わって勧誘するケースが多いです。この勧誘者に対しても規制を強化し、サブリース事業者同様の誇大広告禁止と不当な勧誘の禁止を義務づけています。

また、悪質なサブリース事業者に対する規制のため、サブリース新法に違反する行為を行う事業者については、国土交通大臣に対する「申出制度」が利用できます。

このように、オーナーがサブリース経営を始める際には、そのリスクを十分理解して臨むよう規制が強化されました。

事業者の意識

サブリース新法の成立を、事業者はどのように受け止めているのでしょうか。

サブリース事業者への規制強化のきっかけは、一部の事業者による強引な営業手法とサブリース事業者の経営破綻が及ぼすオーナー被害の深刻さでした。

しかし、小規模な不動産会社やサブリース会社であっても、立地条件がよく高い入居率を維持できる物件であれば、管理業務を受託するよりも魅力のある事業です。

サブリース事業への法規制は、大手も中小も同じ土俵で戦える機会を作る効果があります。

国土交通省は「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」を公表し、多くの事業者が参入しやすい環境を整えています。

今からサブリースを始める場合は?

これからサブリースを始めようと考えた場合、押さえておくべきポイントを紹介します。

サブリースは有力なビジネスモデル

賃貸経営はアパートなどの賃貸住宅を所有し入居者を募集、物件の管理を行い家賃の支払いを受けるビジネスです。サブリースの場合は、実際の管理業務をサブリース会社にすべて委託できます。

サブリースと管理委託との違いは、安定して継続するかどうかです。

満室経営が可能な地域で、競合が少なく賃貸条件がマーケットに適合する状況であれば、自主管理または管理を外部委託して経営を維持することは可能です。

一方、競合が多く満室経営が簡単には実現できないエリアの場合、豊富なノウハウと集客力のあるサブリース会社に経営を任すことができるのであれば、サブリースのほうがオーナーは安定経営が可能です。

またサブリース会社は、単なる委託管理よりサブリース事業のほうが収益性は高まる傾向にあります。多少競合などがあり難しいエリアであっても、条件次第でサブリースを望む場合もあります。

つまり、サブリースはオーナーとサブリース会社の両方にとって、魅力ある選択肢といえます。

サブリース新法の成立など、法律上の規制が厳しくなったとしても、収益性に影響はありません。今後さらに有力なビジネスモデルになるといえるでしょう。

サブリース成功のポイント

オーナーがサブリースを検討する場合、将来の家賃値下げを前提にシミュレーションすることが重要です。

サブリース契約期間は10〜30年間に設定されることが多いですが、その間の家賃設定は一定ではありません。

契約当初は満室経営が継続しても数年経過すると、少しずつ空室が埋まらない状況が続くことがあります。

そのため家賃設定そのものを下げて入居率を高める必要がでてきます。

家賃の下落を資金計画に織り込むひとつ目安となるのが、総務省統計局 物価統計室が公表した「借家家賃の経年変化について」です。

ここでは年率換算で1.0〜1.7%との調査結果を明らかにしています。

サブリースは専門家に相談を

サブリースは空室時の家賃保証や管理をすべて任せられるメリットがあり、賃貸経営の方式として有効です。

しかし、10〜30年という長い期間の賃貸借契約であり、その間のリスクはゼロではありません。家賃下落という大きなリスクを織り込んだ事業計画に基づき、堅実な賃貸経営を目指す必要があります。

重要なのは、サブリース経営におけるパートナーとなるサブリース会社選びです。実績があり信頼のできる専門家に依頼しましょう。


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