まず、アパート経営で必要になる修繕は、大きく3つの種類に分類することができます。
① 大規模修繕
② 原状回復修繕
③ 予防修繕
順番に解説します。
大規模修繕
外壁や配管関係など、築10年を超えたあたりから発生する大規模な修繕です。
修繕に必要な費用も、場合によっては数百万円規模になる為、計画的な資金確保が重要になります。
原状回復修繕
退去者が出た後の室内クリーニングや設備の交換・メンテナンス、共用部分のサビ取りなどの比較的小規模な修繕です。
修繕頻度も数年単位、費用としても数万円から20万円程が一般的ですが、突発的な修繕が必要になるケースもあります。
予防修繕
シロアリ等の害虫検査や屋根などの防水検査など、大規模修繕にならないように予防するための検査や部分的な修繕が該当します。
大規模修繕は長く所有していれば必要になりますが、予防修繕は修繕時期を延ばす、また修繕規模を少しでも小さくするための予防として行うものです。
アパート経営に必要な修繕は、規模によって大別することが出来ますが、具体的には、どのような修繕があるのか?必要時期や費用の目安も合わせて確認してみましょう。
ここでは、アパート経営に必要な修繕について具体例を挙げて解説します。
外構工事
外構工事とは、建物の外壁部分の修繕工事のことで、ペンキの塗り替えなど塗装が主なものになります。
建物の外観は入居者にアピールする上で重要な部分ですので、建物を長持ちさせるだけではなく、入居者募集においても重要な修繕です。
修繕規模の度合いにもよりますが、一般的には大規模修繕に該当し、10年から15年のスパンで塗り替えが必要です。
費用面は、業者に依頼した場合、足場代込みで1㎡あたり1万円から3万円程度が相場です。
塗装面積が大きくなればその分費用がかかりますが、部分的に塗装することも可能です。
最近は、外壁塗装ではなくサイディングボードを採用している物件もありますが、サイディングボードの場合は、10年前後でコーキングの打ち直しが必要になります。
物件規模にもよりますが、足場代込みでおおよそ30万円から50万円が相場となります。
屋根・ベランダの防水加工工事
木造アパートは、経年劣化により雨漏りが発生する場合があるため、防水工事をする必要があります。
防水加工を怠ると木材が腐り、雨漏りの原因になるだけではなく、シロアリやカビの発生につながります。
防水加工は、主に屋根・ベランダで必要になり、時期としては10年前後から15年のスパンで工事が必要になります。
費用は、防水材の種類により様々ですが、1㎡あたり3,000円~1万円ほどになります。
防水材により、対応年数にも若干の違いがありますので、専門業者に相談の上、最適なものを選びましょう。
給排水管工事
配管設備自体の寿命は、15年から30年と言われますが、つまりや水漏れ、臭いなどにより修繕が必要になる場合があります。
劣化がそこまでひどくない場合には、既存の配管を修繕することで再生することが出来ます。
再生工事の費用は、おおよそ20万円前後から50万円程度が相場となります。
劣化がひどく配管設備そのものを交換する必要がある場合には、50万円前後からが相場となります。
給水ポンプ交換工事
3階以上のアパートの場合、水道の水を各部屋に供給するための給水ポンプが設置されています。
2階建て以下の物件の場合では、給水ポンプがなくでも各部屋に水の供給が出来る為、ほとんど設置されていません。
給水ポンプの交換時期はおおよそ20年前後であり、費用は1戸につき約80万円からが相場となります。
鉄部のサビ取り
共用部の階段や廊下など鉄製部材は経年によりサビてきますので、サビ取りを行う必要があります。
サビ取りの時期はおおよそ5年ごとに行うのが一般的ですが、海沿いの物件などサビがひどくなる地域の物件は頻度が上がります。
費用については、手作業で落とせるサビであれば、1㎡あたり約1,000円から、サビの度合いがひどく、電動工具や薬品を要する場合には、1㎡あたり約3,000円からが相場となります。
エアコン・給湯器の交換
各部屋必須の設備で定期的な交換が必要なものと言えばこれ、エアコンや給湯器です。
部屋の広さによって必要なスペックは変わりますが、ともに1台10万円前後が目安となります。
すべての世帯を一度に交換すると、それぞれ合わせて20万円が世帯数分必要になりますので、まとまった資金が必要です。
交換時期については、双方おおよそ10年前後が目安となります。
クロス・クッションフロアの交換
それぞれ、退去が発生した後の原状回復の際に行うものですが、早期に退去した場合など状態によっては交換が必要ない場合もあります。
入居者が喫煙者の場合、クロスの状態は非常に悪くなりますので、室内禁煙にする方がクロスについては長持ちします。
交換時期の目安は、それぞれ5年から10年ほどと考えておきましょう。
費用については、部屋の広さや素材によって変わりますが、どちらもおおよそ5万円前後が相場となります。
前項では、アパート経営で必要となる修繕の種類について具体的に紹介しましたが、経営努力次第では、修繕時期を延ばし、費用についても最小限に抑えることが出来ます。
室内などは入居者が生活している為、チェックすることが難しいですが、外壁や共用部、屋根部分など外からでも確認できるものは定期的なチェックを心掛けましょう。
投資である以上、費用については、必要最小限に抑えたいところ。
例えば、「外壁塗装は、すべてやらずに色あせた箇所を部分的にやる」、「屋根の防水加工をする前に事前に防水テープをはっておく」など、努力次第で修繕自体を軽くすることは可能です。
定期的にチェックをすることで、物件の劣化に気づくことが出来ますので、先述した修繕内容を参考に各箇所の状態を把握するようにしましょう。
会社員など他に本業がありなかなか物件に足を運べない方は、管理会社にお願いするのが便利です。
管理会社は、物件管理の専門家ですので、物件の状態によって適格なアドバイスをしてくれます。
入居募集をはじめ、入退去に関わる業務まで網羅的にサポートしている管理会社であれば、入居者目線に立ったより実用的なアドバイスをもらえるでしょう。
今回は、アパート経営の修繕をテーマに解説しましたが、具体的なイメージはわきましたでしょうか?
修繕についての知識が少ないままアパート経営をスタートすると予想もしなかった出費が発生し、資金が枯渇するというリスクにつながります。
修繕について事前にしっかりと確認し、計画的な修繕を心掛けると共に、修繕の発生を考慮した上で物件を選ぶこともリスクを減らすために重要です。
何も知らずに中古の築古物件を購入し、いきなり大規模修繕が発生して資金が無くなるという事例はアパート経営でよくある話です。
修繕について知ることは、物件購入時にも役に立つのだという認識を持ちましょう。
また、先述したとおり、修繕を最小限に抑えるためにも管理会社を活用した定期的なチェックをおすすめします。
投資家目線では気付かないような細かい部分までアドバイスをもらえることもありますので、投資家としての知見を増やすことにもつながります。
今回の内容を参考に、修繕による想定外の出費を減らすことをはじめとして、投資リスクを少しでも減らすことにつなげて欲しいと思います。